研究課題
全ての脳機能は発生期に構築される神経回路の正確な配線パタンに依存しており、神経配線の異常は種々の神経疾患に直結する。発生過程の神経細胞から伸びる軸索突起の先端部(成長円錐)は、周辺環境を感知して方向転換しながら移動し、遥か遠隔の標的まで正確に辿り着く。本課題では、成長円錐の運動性を統御する司令塔として膜交通機構に焦点を当て、膜交通が各種機能分子群(細胞骨格制御因子・接着因子等)の細胞内局在や動態を適材適所にコントロールすることで、成長円錐の臨機応変な運動性を生み出す仕組みを解明することを目指している。そのために、研究代表者らが開発した高速超解像顕微鏡と光遺伝学ツールを駆使し、生きた成長円錐内における様々な膜交通現象を精密に観て、操作する。令和4年度は、高速超解像顕微鏡観察に適した新奇蛍光タンパク質として、耐褪色性能に優れた性能を呈するStayGoldの検討を行った。小胞体で新規合成された膜/分泌タンパク質の輸送を可視化できるRUSH法の蛍光タグとしてこれを付加すると、長時間露光に対してほとんど褪色が見られず、高い時間分解能で長期的な積荷輸送動態を観察できることが分かった。さらに、2種類の膜タンパク質受容体をRUSH法の積荷として用いると、これらが輸送出発点の小胞体においてすでに異なる分布を取ることが予備実験で明らかになっていたが、本年度は各種変異体を用いた検証により、異なる小胞体局在を担う分子内責任領域を突き止めた。
2: おおむね順調に進展している
新奇蛍光タンパク質の性能が素晴らしく、今後の解析に向けた方法論の大きな進歩がみられたため。その他の研究計画も概ね順調に進展している。
新奇蛍光タンパク質プローブと高速超解像顕微鏡を組み合わせることで、極めて高い時空間分解能で積荷の動態を解析してゆく。特にオルガネラ上の選別輸送ゾーン形成について、輸送小胞出芽に関わる被覆・アダプター分子と積荷との相互作用や、オルガネラ上の膜交通関連分子群の寄与などにも着目しながら、イメージング手法だけでなく、生化学実験や薬理的実験、遺伝学的手法も組み合わせて明らかにしてゆく。膜交通を操作する光遺伝学ツールの開発・検証も引き続き継続してゆく。
新奇蛍光タンパク質の導入によって実験が予定より順調に進み、コンストラクションの作製などに必要と想定していた消耗品を購入せずに研究を遂行することができたため。次年度使用額は、膜交通を操作する光遺伝学ツールの更なる改良・開発に充てる予定である。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
Methods in Molecular Biology
巻: 2557 ページ: 127~140
10.1007/978-1-0716-2639-9_10
https://rap.riken.jp/labs/sprg/lcmirt/
http://sclim.riken.jp/