研究課題/領域番号 |
22K06219
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
稲葉 弘哲 三重大学, 医学系研究科, 講師 (80791334)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 光遺伝学 / RhoA / カルシウムシグナル |
研究実績の概要 |
RhoおよびRasファミリーの低分子量Gタンパク質と細胞内カルシウムシグナルは協調的に細胞骨格や細胞増殖・細胞分化などを制御している。最近、我々は光遺伝学的手法によってRhoAが細胞内カルシウムシグナルを活性化することを示したが、その詳細な分子機序や、空間的制御について不明な点が多く残されていた。 本研究では、光遺伝学の長所である高い特異性と時空間分解能によってRhoAの活性を操作し、細胞内カルシウムの挙動や下流分子の変化を観察し、その時空間的な制御機構を明らかにすることを目的とした。 昨年度、光遺伝学ツールCRY2clustによるRhoAとPLCεの相互作用部位の探索を実施したが、改めてコントロール実験を行ったところ、ネガティブコントロールであるEGFP-CRY2clustとmCherry-Raf1RBDでも結合が検出されることが判明した。蛍光タンパク質をmCherry-CRY2clustとEGFP-Raf1RBDに入れ替えたところ、この問題は解決した。 HEK293T細胞におけるRhoA-Ca2+経路の分子機序について、候補因子であるTRPC1,3,6についてsiRNAによるノックダウンにより検討した。しかし、いずれもRhoAを光遺伝学的手法で活性化した際の細胞内カルシウム濃度の上昇は消失しなかった。RPE1細胞においても、RhoA-PLCε経路以外にも存在する可能性を考慮し、これらのノックダウン実験を実施したが、細胞内カルシウム濃度上昇の変化はみられなかった。 局所的な光照射実験については、共焦点レーザー顕微鏡の代替として、蛍光顕微鏡での実施の可能性について検討した。局所光照射システムPolygon1000のデモを実施し、目的通りに細胞の局所に光を照射し、その領域のみで光遺伝学ツールを活性化できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
相互作用検出の系において、ネガティブコントロールで想定外にポジティブな結果が出たため、再検討が必要となった。また、HEK293T細胞におけるRhoA-Ca2+経路について、予想された経路からは結果が得られなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
RhoAとPLCεの相互作用領域の検討については、共免疫沈降およびGSTプルダウンといった、生化学的手法で実施する。過去の報告では、これらは直接相互作用していると考えられるが、それ以外の可能性についても検討する。相互作用領域が同定できた場合には、AlphaFoldなどのシミュレーションから、相互作用に必要な残基の候補を得て、点変異体を用いた実験を実施する。 HEK293TおよびMDCKによるRhoA-Ca2+経路については、機械受容チャネルについて、全てのsiRNAスクリーニングを実施することは困難であるので、低分子阻害剤を用いてもう一度絞り込むところから開始する。 局所的な刺激実験については、引き続き、必要な材料や機材のセットアップを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおよそ想定通りの予算を使用したが、相互作用の検討など、やり直しが生じた実験の影響で新たな実験を実施することができなかった。昨年度実施できなかった実験の消耗品の購入に充てる。
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