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2023 年度 実施状況報告書

繊毛運動を制御する機械受容チャネルの生理機能と分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K06228
研究機関芝浦工業大学

研究代表者

吉村 建二郎  芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (10230806)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード繊毛 / 細胞運動 / 機械受容 / TRPチャネル / 機械受容チャネル / 単細胞生物 / クラミドモナス
研究実績の概要

繊毛基部に発現するTRPチャネルのひとつであるTRP11が関与する機械反応の研究をすすめた。昨年度までの成果をiScience誌に発表した。
(1)せん断応力への反応:クラミドモナスにホモジナイザーによりせん断応力を与えると、脱繊毛が起こる。せん断応力を定量的に与えるためにcone and plate型の粘度計でせん断力を与えた。その結果、0.5 Pa以上のせん断応力で脱繊毛が起こることが分かった。さらに、TRP11ノックアウト株では脱繊毛が起こらないので、TRP11による機械反応であることが分かった。
(2)変異体を用いたTRP11の分子機構の解明:TRP11の膜貫通部位とTRPヘリックスにある残基をそれぞれアラニンに置換した点突然変異体をTRP11ノックアウト株に発現させ、せん断応力への反応の有無でそのTRP11変異体が機械反応を引きおこすことができるかを検討した。その結果、イオン透過孔を形成すると推定される残基をアラニンに置換すると、TRP11の機能が失われることが分かった。したがって、TRP11がイオンチャネルとしての機能を持つことが確実となった。一方、TRPヘリックスに変異を入れても機能には影響がなかった。
(3)電気生理学的解析:機械刺激が与えられたときにTRP11が発生する電流を測定することを目的に、細胞をパッチ電極で吸い付け、ピエゾ素子で動くガラス棒で細胞前端をたたく機械刺激を与えた。その結果、刺激の大きさに応じて大きくなる電流が測定された。この電流はTRP11ノックアウト株では観察されなかったので、TRP11が発生する電流と思われる。
以上の3つ実験により、繊毛根本にあるTRP11が、せん断力への反応に関与していることと、機械刺激により受容器電流を発生していることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画では、本年度では以下(1)と(2)の2つの計画があった。
(1) 電気生理学的手法により、TRP11が引き起こす電気生理学的現象を測定する:本年度では、微小ガラス棒で繊毛根元に機械刺激を与えることができるようになり、刺激・反応曲線が得られるようになった。TRP11ノックアウト変異体ではこの電流が発生しないことが明らかになった。当初計画通りに進んでいる。
(2) TRP11への変異導入や相互作用タンパク質の解析により、TRP11の作動の分子メカニズムを解明する:TRP11に変異を入れた発現コンストラクトを作成を終了し、変異TRP11を発現している細胞を作ることができた。その表現型の解析も進んでいる。相互作用をするタンパク質の同定も計画しているが、そのためのタグ付のタンパク質を発現させることができた。以上より当初計画通りと言える。
(3) 前年度の成果により、せん断応力により脱繊毛反応が起こることを発見した。この発見をさらに深掘りするために、粘度計で定量的にせん断力を与え、反応の生物物理的特徴を明らかにすることができた。これは、本研究による新発見であり、計画以上の成果をあげていると言える。

今後の研究の推進方策

本研究の3つの実験についてそれぞれ推進方策を述べる。
(1) 電気生理学的手法により、TRP11が引き起こす電気生理学的現象を測定する:機械刺激を与えたときの受容器電流を測定することができた。しかし、そのあとに発生するはずの繊毛での活動電位を測定することができていない。これは用いているTRP11と、細胞壁がないcw2変異体との2重変異体が活動電位発生に異常があるらしいことが分かったので、この2重変異体をとりなおす。新たに得られた株で、解析を続ける。
(2) TRP11への変異導入や相互作用タンパク質の解析により、TRP11の作動の分子メカニズムを解明する:TRP11遺伝子に変異を入れ、その遺伝子をTRP11ノックアウト株に発現させる系は完成している。変異箇所をさらに増やし、TRP11の分子機能の解明を進める。
(3)せん断応力による脱繊毛反応:せん断応力への順応、粘性が高い溶液での脱繊毛、運動変異体での脱繊毛などの実験を通じて、せん断応力による脱繊毛の生理的特徴を解明する。

次年度使用額が生じた理由

国際会議への出張旅費が高騰しているため、最終年度である次年度に国際会議で研究成果を発表できるようにした。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Temperature‐dependent augmentation of ciliary motility by the <scp>TRP2</scp> channel in <i>Chlamydomonas reinhardtii</i>2024

    • 著者名/発表者名
      Fueki Shunta、Kaneko Taro、Matsuki Haruka、Hashimoto Yuki、Yoshida Megumi、Isu Atsuko、Wakabayashi Ken‐ichi、Yoshimura Kenjiro
    • 雑誌名

      Cytoskeleton

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1002/cm.21840

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mechanoresponses mediated by the TRP11 channel in cilia of Chlamydomonas reinhardtii2023

    • 著者名/発表者名
      Oshima Daichi、Yoshida Megumi、Saga Kosuke、Ito Neo、Tsuji Miyu、Isu Atsuko、Watanabe Nobuo、Wakabayashi Ken-ichi、Yoshimura Kenjiro
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 26 ページ: 107926~107926

    • DOI

      10.1016/j.isci.2023.107926

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Shear-induced detachment of cilia in Chlamydomonas reinhardtii.2024

    • 著者名/発表者名
      Kadowaki, Y., Tsuji, M., and Yoshimura, K.
    • 学会等名
      68th Biophysical Society Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] In search of a compact closed conformation for bacterial mechanosensitive channel MscS.2024

    • 著者名/発表者名
      Moller, E., Britt, M., Anishkin, A., Yoshimura, K., Zhou, F., Matthies, D., and Sukharev, S.
    • 学会等名
      68th Biophysical Society Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 繊毛運動の温度による制御2023

    • 著者名/発表者名
      笛木駿太・吉田愛美、吉村建二郎
    • 学会等名
      日本生物物理学会第61回年会
  • [学会発表] Structure-function relationship of the MSC1 mechanosensitive channel in Chlamydomonas reinhardtii.2023

    • 著者名/発表者名
      Hirano, T. and Yoshimura, K.
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会第45回大会
  • [学会発表] Shear-induced deciliation is mediated by TRP11 in Chlamydomonas.2023

    • 著者名/発表者名
      Kadowaki, Y., Tsuji, M., Ito, N., Watanabe, N., and Yoshimura, K.
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会第45回大会
  • [学会発表] Environmental factors that determine the direction and degree of thermotaxis in Chlamydomonas.2023

    • 著者名/発表者名
      Matsuki, H. and Yoshimura, K.
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会第45回大会

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公開日: 2024-12-25  

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