研究課題/領域番号 |
22K06230
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小松 直貴 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (30737440)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | mTOR / 細胞周期 / 生細胞イメージング / FRETプローブ |
研究実績の概要 |
mTOR複合体1(mTORC1: mechanistic target of Rapamycin complex 1)は、細胞内外のさまざまな情報を感知・統合し、複数の下流を協調的に制御するという最重要のシグナル伝達分子であるが、細胞内でどのような時間ダイナミクスで活性化しているのか、ほとんど分かっていない。このため、mTORC1活性化の時間ダイナミクスと下流の表現型との関係についても分かっていない。 本研究では、生細胞蛍光イメージングによりmTORC1の活性とその下流の一つである細胞周期を可視化すること、加えて分子操作によりmTORC1活性のダイナミクスと細胞周期との因果関係を明らかにすることを目的としている。今年度は、前年度に同定したmTORC1活性を誘導する因子を利用して、合成リガンド依存的にmTORC1活性化を誘導できる系を開発した。開発した系の利用により、mTORC1下流のS6Kの活性化を誘導できることを確認した。また、人工的なmTORC1活性化によりタンパク質翻訳を誘導できることを確認した。 細胞周期とmTORC1活性のイメージング解析については、前年度までに細胞質におけるmTORC1の活性が細胞周期依存的に変化すること、および、G1期におけるmTORC1の持続的な活性化がG1の進行に必要であることを見出していた。今年度は他の細胞種数種類や細胞核におけるmTORC1活性の可視化を行い、細胞周期依存的なmTORC1活性化に関する知見をより深めるデータを獲得した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mTORC1活性の操作法の開発について。合成リガンドによるmTORC1活性化に必要な条件検討を行い、ある程度十分な変化幅で活性化を誘導できるようになった。人工的なmTORC1活性化の下流イベントの解析についても、タンパク質翻訳の促進がおきることを、抗ピューロマイシン抗体を用いた蛍光免疫染色により確認でき、mTORC1活性化による細胞周期の制御に向けた技術開発が進められたと考える。 mTORC1活性と細胞周期のイメージングについて。前年度に引き続き解析を進めることで以下のような知見が得られた:細胞質と異なり、細胞核ではmTORC1活性が低く抑えられているため細胞周期依存的なmTORC1活性化が起きない。細胞の由来となる動物種によってはmTORC1活性が高い状態で推移するため細胞周期依存的な活性変化が起きない。概して細胞周期依存的なmTORC1活性化に関する知見をより深めるデータを獲得できたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度開発したmTORC1活性化を誘導できる系を用いることで、mTORC1活性化がG1期の進行を促進する上で十分か検討を行う。並行して、細胞周期以外の表現型として翻訳とオートファジーに着目し、mTORC1活性化と表現型のダイナミクスについて解析を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗に伴い、次年度に、mTORC1活性化や翻訳レベルの生化学的解析に必要な抗体を複数種類購入することを計画した。購入予定の抗体が比較的高価であることから、今年度予算の一部を抗体購入費に充てることで予算の有効活用を行うこととし、繰越を行った。
|