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2023 年度 実施状況報告書

環境応答における細胞壁の新規機能:XYLANASE1発現制御を介した乾燥耐性調節

研究課題

研究課題/領域番号 22K06270
研究機関京都先端科学大学

研究代表者

遠藤 暁詩  京都先端科学大学, バイオ環境学部, 講師 (00342759)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード細胞壁 / 環境応答 / 細胞間相互作用
研究実績の概要

前年度では、XYLANASE1 (XYN1) 発現低下によって誘導されるシロイヌナズナの乾燥耐性が、CLE26ペプチドシグナルの働きによることを示唆する結果を得た。本年度では、まず、機能欠損変異体cle26において低下した乾燥耐性が、野生型のCLE26遺伝子配列をcle26変異体に導入することで、野生型植物体と同様のレベルまで回復することを確認した。そして、xyn1変異体の高い乾燥耐性が、cle26変異を導入することで抑圧されることも観察できたことから、細胞壁修飾に関わるXYN1と細胞外で輸送されるCLE26ペプチドの関係が遺伝学的に示された。当初、XYN1発現低下がもたらす乾燥耐性にCLE25ペプチドの関与を予想していたこと以外は、計画以上に進んだ。一方、次に重要になるのが、XYN1の発現変動に依存して、CLE26ペプチドシグナルの働きに影響を及ぼす細胞壁構造変化の探索である。申請書に記した、LM10抗体を用いたキシラン検出では、xyn1変異体を特徴付ける染色パターンを得られなかった。また、XYN1のポプラホモログであるXYN10Aノックダウン変異体では多種多様な細胞壁構造変化が報告されている。そこから目的の細胞壁構造変化を決定するには様々な予備実験が必要であると判断したため、一旦、これまでの成果を国際誌に投稿することとした。論文を作成するにあたり、XYN1発現に依存したCLE26ペプチドシグナルの調節が、輸送レベルで行われる可能性について調べた。その結果、xyn1変異体に蛍光ラベルしたCLE26ペプチドを添加すると、野生型と明らかに異なるシグナルの動きが観察された。さらに、合成CLE26ペプチドを直接葉に塗布すると、XYN1発現レベルにかかわらず乾燥応答マーカーとしてNCED3発現を誘導できたことから、輸送レベルでの制御の可能性を示すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定を上回るペースで、XYN1の発現抑制が乾燥耐性誘導する仕組みを説明する上で鍵となる、CLE26ペプチドシグナルの関与を示すことができた。さらに、XYN1発現に依存した輸送レベルでの制御によって、CLE26ペプチドシグナルが機能する可能性を見出し、国際誌に発表するに至った。一方で、XYN1発現変動がもたらす細胞壁構造変化の探索は進まなかった。

今後の研究の推進方策

令和5年度の2月に投稿した論文が受理されたことから、最終年である令和6年度は、本研究の提案のなかで進捗があまりなかったポイントを整理して、本研究を将来的に進展させるために必要と考えられる予備実験を積極的に行う。検討するポイントは、(1) 輸送制御に関わるようなXYN1発現とリンクした細胞壁構造の探索、(2) 乾燥よるCLE26遺伝子発現の誘導機構、(3) XYN1のCLE25ペプチドシグナルへの影響、(4) XYN1と非常によく似たXYN3の役割、(5) cle25 cle26二重変異体の表現型解析、以上の5つである。特に (1) については、細胞壁成分の分析や抗体染色だけでは解明できないため、細胞壁関連変異体の乾燥応答性比較など、実行可能な様々なアプローチを検討する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] A cell-wall-modifying gene-dependent CLE26 peptide signaling confers drought resistance in <i>Arabidopsis</i>2024

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Endo, Hiroo Fukuda
    • 雑誌名

      PNAS Nexus

      巻: 3 ページ: pgae049

    • DOI

      10.1093/pnasnexus/pgae049

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 細胞壁関連遺伝子XYLANASE1を介した乾燥耐性の制御2024

    • 著者名/発表者名
      遠藤暁詩、福田裕穂
    • 学会等名
      第65回日本植物学会生理学会年会
  • [学会発表] A cell wall-modifying gene-dependent CLE peptide transport in conferring drought resistance2023

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Endo, Hiroo Fukuda
    • 学会等名
      The 33rd International Conference on Arabidopsis Rsearch (ICAR)
    • 国際学会
  • [学会発表] A cell wall-modifying gene-dependent CLE peptide transport in conferring drought resistance2023

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Endo, Hiroo Fukuda
    • 学会等名
      Taiwan-Japan Plant Biology 2023 (TJPB 2023)
    • 国際学会
  • [備考] バイオ環境学部の遠藤講師の論文が PNAS Nexus 誌に

    • URL

      https://www.kuas.ac.jp/news/2024/2/6363

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公開日: 2024-12-25  

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