研究課題/領域番号 |
22K06284
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高野 博嘉 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (70242104)
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研究分担者 |
武智 克彰 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (70515501)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 葉緑体 / ペプチドグリカン / D-アミノ酸 |
研究実績の概要 |
我々は細菌細胞壁に由来するペプチドグリカン(PG)がコケ植物の葉緑体を覆っており、葉緑体分裂に関わることを示してきた。PGはD-アミノ酸(D-AA)を用いており、コケでもD-アラニル-D-アラニンを用いた代謝標識法によるPG可視化に成功している。D-AAは、植物にとって役に立たない、あるいは有害な物質であると考えられてきたが、近年D-AAの生理機能が報告されてきている。本研究では、コケ植物の葉緑体分裂機構に関わる葉緑体型PGに関し、以下の研究を進めた。 (1) D-AAを含むPGの化学構造の決定。ヒメツリガネゴケの葉緑体PGが細菌のPG同様にD-Glu を用いているかについて、細菌ではPGのペプチド鎖の2番目のD-Gluを追加する酵素であるMurDの解析を進めた。ヒメツリガネゴケゲノム中に1個だけ存在する相同遺伝子(PpMurD)の遺伝子破壊実験を行なったところ、他のPG合成酵素の遺伝子破壊ラインと同様に巨大葉緑体が出現した。このことは、このPpMurDが葉緑体PG合成に関与する、ただ一つのMurDであることを示唆している。 (2)植物におけるD-AA合成経路の解明とその生理機能。本年度は、PGのペプチド鎖の4、5番目に位置するD-アラニル-D-アラニンの合成に必要な、D-アラニン合成酵素の探索を進めた。細菌ではD-アラニンは主にL-アラニンの異性化酵素(AlaR)によって生産されるが、植物にはこれらの相同遺伝子は見いだされない。細菌クラミジアでセリンとグリシンの相互変換に関わるserine hydroxymethyltransferase(SHMT)および大腸菌でメチオニン合成に関わるcystathionine β-lyase(MetC)が副反応としてAlaR活性を持つこと知られている。これらのヒメツリガネゴケ遺伝子の探索を行い、クローニングと酵素活性の測定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物学会・植物生理学会等の国内学会での研究発表を進めており、研究は順調に進展していると考えている。論文発表も進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
葉緑体型PGとD-AA合成に関する以下の2つの研究を推進する。
(1) D-AAを含むPGの化学構造の決定。ヒメツリガネゴケの単離葉緑体からPGを精製し、質量分析法を用いた葉緑体型PGの構造決定を進める。細菌のMurDの中には、L-Gluを付加するものがあることが知られており、これらの細菌では、その後PGのペプチド鎖中でL-GluからD-Gluへの異性化が生じる。PpMurDがD-Glu、 L-Gluのどちらを用いるかを調べていく。 (2)植物におけるD-AA合成経路の解明とその生理機能。植物におけるAlaRの探索を進める。ヒメツリガネゴケSHMTの中に、葉緑体移行配列が予測される機能未知のものが存在していた。そこで、シロイヌナズナとヒメツリガネゴケからこのSHMTをクローン化し、大腸菌発現系でタンパク質を調製しているので、同じくクローン化したMetCと共に、酵素活性の測定を行う予定である。Gluラセマーゼについても、植物ゲノムからは見いだされておらず、探索を進めている。
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