研究課題
植物にとって、発芽後の初期成長はその場に生存するための最初の重要なイベントである。脂肪性種子植物では、発芽直後の子葉細胞は貯蔵脂肪から栄養を得る従属栄養状態であり、その後、光を受けて緑化すると自ら光合成を行う独立栄養状態へと大きく変化する。本研究では、子葉の緑化によって不要となる貯蔵脂肪がどのような過程で消失するのかを明らかにすることで、これまで知られていなかった植物の実生の生き残り戦略を明らかにすることを目的とする。初年度は、脂肪酸β-酸化系欠損株(ped1)とグリオキシル酸回路機能欠損株(icl)においても、光照射によって細胞内のLB量が減少することをレーザー顕微鏡解析とトリアシルグリセロール量の経時的測定により明らかにした。その結果、ペルオキシソームにおける脂肪酸β-酸化系とグリオキシル酸回路に依らない、光照射によって駆動する貯蔵脂肪消失機構の存在が証明された。そこで、次に、atg変異株におけるトリアシルグリセロール量の変化も測定したが、atg変異株においても、光照射によるLBの減少が起きていることが確認された。よって、現時点では、光によるLBの消失にオートファジーが関与していると断定することはできない。しかし、LBの減少は、ペルオキシソームの代謝系によっても並行して行われている可能性がある。さらに、野生株とグリオキシル酸回路機能欠損株(icl)の電子顕微鏡解析にも着手している。また、本研究テーマとは少し異なる内容ではあるが、これまでの研究成果をもとに、シロイヌナズナのペキソファジーについての新たな知見を報告した(Nature Communication, Oikawa et al.,2022)。
2: おおむね順調に進展している
計画していた実験のうち、3項目に着手し、脂肪酸β-酸化系欠損株(ped1)とグリオキシル酸回路機能欠損株(icl)の解析から、光で駆動するLBの減少に、ペルオキシソームによる代謝系以外の機構が関わっていることが裏付けられたため。
まずは、現在着手している実験を優先的に終了させる。また、レーザー顕微鏡解析のためのNRを用いたLBの染色方法を確立したので、予定していた株の掛け合わせよるLB可視化変異株の作出については取り組む必要がなくなった。よって、R5年度は、変異株のLBの形態学的な解析を中心に行う、また、オートファジーの関与を証明する実験として、申請時には予定していなかったコンカナマイシンAの影響解析を追加して実施する予定である。
ウエスタンブロッティングによるペルオキシソーム酵素の発現量解析を初年度も行う予定だったが、次年度に行うことにしたため、試薬の購入が次年度に移動した。よって、R5年度に使用する予定である。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 298 ページ: 102038-102038
10.1016/j.jbc.2022.102038
Nature Comunications
巻: 13 ページ: 7493
10.1038/s41467-022-35138-z
https://www.niigata-u.ac.jp/news/2022/315019/