研究実績の概要 |
行動中の魚から呼吸波を記録する手法の開発をおこなった。基本的技術の確立のため、ゼブラフィッシュを実験材料として検討した。水槽内に設置した4-5対のステンレス電極により呼吸に伴う生体電気現象を多チャンネル導出し、増幅・周波数フィルタののちにパソコンに取り込み、解析した。また電気的記録と同期したビデオ撮影により魚の行動を記録した。ビデオ映像から魚の位置・姿勢を算出し、これに基づいて複数の電極対から得られた信号を統合処理することにより、単一の統合呼吸波を得た。これらの処理に用いたソフトウェアはLabViewプラットフォームにより作成した。 この成果をゼブラフィッシュに対する薬効評価に応用し、エタノールとカフェインが新奇環境における不安情動の発現と慣れの過程に及ぼす効果を検討した。この検討では、ゼブラフィッシュを新奇環境(オープンフィールド)に導入したときに不安情動が惹起され、時間の経過とともにその環境に馴化するにつれて不安情動が減ずるという実験系を利用した。オープンフィールド水槽には複数対の電極が配置され、呼吸波が計測された。また魚の行動は、呼吸は計測と同期したビデオ撮影により記録した。その結果、行動指標に加えて生理指標(呼吸)を評価基準に加えることにより、行動テストのみに依存する評価法と比べてより精密に薬効を評価できることが示唆された。これらの成果は、専門学術誌に投稿され、印刷公表された(Harada et al., 2022, Scientific Reports, 12, 17649; Yoshida, 2022, Physiology & Behavior, 257, 113978)。
|