研究課題/領域番号 |
22K06330
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小柳 香奈子 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (20362840)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞分化 / 細胞系譜 / エピジェネティクス / シングルセル / 系統解析 / 祖先推定 |
研究実績の概要 |
本研究は、多細胞動物の細胞分化過程におけるエピゲノム変遷過程の推定を行うことを目的としている。分化途中の細胞を直接取得することには困難を伴うが、比較的取得が容易な分化した体細胞のエピゲノム情報を用い、これに分子系統解析を応用することで、問題の解決を試みる。 今年度はエピゲノム情報として、クロマチン構造がオープンで活発な遺伝子転写と関連するクロマチンアクセシビリティ情報を用いた解析を行った。公共データベースから利用可能なマウス血球系細胞のクロマチンアクセシビリティ情報に基づき、1) 系統解析により細胞の分岐過程を推定し、2) 推定された樹形に基づき祖先節にあたる分化途中の細胞の状態の推定を試みた。得られた結果を既知の情報と比較し、推定結果の検証を行った。 その結果、1) 既知の細胞の分岐過程を部分的に再構成ができることが示された。2) 分化途中の前駆細胞のクロマチンアクセシビリティ状態の推定については、高い特異度で予測が可能であった一方、感度は低い結果となった。このことはクロマチンアクセシビリティが発現状態と密接に関わりダイナミックに変化するために、前駆細胞特異的な状態を推定しにくく偽陰性が多いことを反映していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNAメチル化やヒストン修飾と同様に、クロマチンアクセシビリティ情報についても、分子系統解析に基づいて一定程度、細胞の分岐過程やエピゲノム変遷過程の推定が可能なことを示すことができた。結果は論文にまとめ投稿し、現在査読中である。今年度はまず細胞集団由来のデータを用いて解析を行ったが、単一細胞由来のデータについても現在同様に解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、細胞の分岐過程に関する研究が進んでおり、また分化途中の前駆細胞の単離も可能でそれらのエピゲノム情報が取得可能な血球系細胞を材料に用いた。今後は、線虫やオルガノイドのサンプルなど、分化過程が既知の材料についても対象を広げていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析データの増大にともない、次年度に購入予定だった記憶装置等を本年度に購入し、今年度に購入する予定だった計算機を来年度に購入するよう変更を行った。
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