研究課題
ショウジョウバエのオスの妊性を担う附属腺は,約1,000個の主細胞と60個の第二細胞から構成される.転写制御因子Defective proventriculus (Dve) は蛹期では附属腺全体で発現が見られるのに対し,成虫期では第二細胞でのみ見られる.これは成虫期主細胞ではプロテアソーム活性によりDveが常に分解されているためである.しかし,過剰栄養シグナルや小胞体ストレスを受けるとプロテアソーム機能が阻害され,Dveの分解が停止して安定化する「Dve脱抑制」が生じ,オスの妊性が低下する.ストレス期間を変化させた実験により,Dve脱抑制はストレス強度に依存した可逆的な現象であることが分かった.ステロイドホルモン (エクダイソン) シグナルは栄養状態や妊性と密接に関連しており,附属腺におけるエクダイソン受容体の発現も栄養シグナルに依存し,Dve 活性によって維持されることが明らかとなった.主細胞におけるエクダイソン受容体も Dve と同様の分解制御を受けている可能性について検討したところ,エクダイソン受容体 A (EcR-A) は強制発現した主細胞で安定的に検出できた.一方,エクダイソン受容体 B1 (EcR-B1) は強制発現した主細胞で強い分解制御を受けていることが明らかとなった.また,ストレス条件下においては,第二細胞の EcR-A 発現が低下することも明らかとなり,ストレス応答におけるステロイドホルモンシグナルが妊性制御に関わる可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
Dve 脱抑制時に発現が低下する Dve 標的遺伝子候補がマイクロアレイ解析によって同定されており,ストレス応答性が確認された遺伝子については GFP 融合タンパク質発現系統が準備できている.
ストレス応答性が確認されている Dve 標的遺伝子候補について, GFP 融合タンパク質発現系統を用いて詳細な解析を進める予定である.
飼育チューブなどを再利用することで支出削減に努めた結果,488,474円を次年度に繰り越すことができた.翌年度分の助成金とともに消耗品の購入資金に充てる予定である.
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Developmental Biology
巻: 508 ページ: 8-23
10.1016/j.ydbio.2024.01.004
Development
巻: 151 ページ: dev202388
10.1242/dev.202388
https://sites.google.com/view/nakagoshi-lab-hp