アユは海と河川を行き来する両側回遊型であり、一生のうちにプランクトン食から付着藻類食へと食性が変化する。食性の変化について文献調査や関係者への聞き取りを進めた結果、海中で生活しプランクトン食の稚魚および河川の中上流域で生活し藻類食の成魚に加え、海からの遡上途上の幼魚が昆虫食を含む独自の食性を示すことが明らかになった。そこで、3つの段階のアユ個体を入手し、全mRNAを抽出してcDNA化した。その試料を用いて、RNA-seq解析およびリアルタイムPCR解析を実施し、遺伝子発現量の定量化を進めた。RNA-seq解析の結果、一部の魚類では複数セットのTas1rsが報告されているものの、アユのTas1rsは1セットである可能性が高まった。また、Tas1r1とTas1r2についてはゲノム配列で予想されたエキソンに対応するmRNAが発現していたが、Tas1r3についてはその上流に5’UTRであるもう一つのエキソンが見つかった。さらに、5’UTRの発現に複数のバリアントが見つかり、これらが成長段階における遺伝子発現量の変化と関連している可能性もある。
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