研究課題/領域番号 |
22K06348
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
安岡 有理 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (70724954)
|
研究分担者 |
山田 勇磨 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (60451431)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ミトコンドリア / ゲノム編集 / 進化 / シロアゴガエル / ツメガエル |
研究実績の概要 |
【計画1】ゲノム編集によるネッタイツメガエルMitoゲノム変異体の作出 ミトコンドリア局在型蛍光タンパク質をCMVプロモーター下で発現するトランスジェニックツメガエル系統(MITO-EGFP系統)を入手し、受精卵の植物極側に蛍光標識したRP-loop付きsgRNAを顕微注入した結果、ミトコンドリアとの共局在が観察された。しかし、RP-loopのないsgRNAでも同様の共局在パターンが観察されたため、RP-loop配列のミトコンドリア局在に対する有効性は示されなかった。 【計画2】MITO-Porterを用いたMitoゲノム遺伝子の機能解析 MITO-EGFP系統受精卵の植物極側にDiD標識したMITO-Porterを顕微注入し、ミトコンドリアとMITO-Porterの共局在を検討した。その結果、ミトコンドリア膜との静電相互作用を引き起こすR8標識を除いたものに比べ、R8標識されたMITO-Porterの方が植物極側に集積したミトコンドリアとよく共局在することが判明した。 【計画3】シロアゴガエル全ゲノム配列の解読 一分子ロングリードシークエンサー(PacBio Sequel II HiFiリード)のデータを追加し、シロアゴガエルのゲノムアセンブリを改良した(Scaffod N50=11.7Mb, complete BUSCOs=96.1%)。トランスクリプトームデータと合わせ、BRAKER3を用いて遺伝子モデルを作成し、ORTHOFINDERを用いて他の無尾両生類と遺伝子モデルの比較を行った。また、シロアゴガエルAtp8を外来遺伝子としてヒト培養細胞に過剰発現させたところ、ヒトやツメガエルのATP8と異なり、ミトコンドリアへの局在が観察されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【計画1】ゲノム編集によるネッタイツメガエルMitoゲノム変異体の作出 ミトコンドリアゲノム編集個体の作出には至らなかったが、MITO-EGFP系統を用いたミトコンドリアのライブイメージング実験系を確立できた。sgRNAのミトコンドリア局在に対するRP-loop配列の効果が薄いことは文献上でも報告があり、培養細胞やツメガエル胚でこれまで良好な結果が得られていないことも致し方ないと言える。 【計画2】MITO-Porterを用いたMitoゲノム遺伝子の機能解析 MITO-Porterのツメガエル胚におけるミトコンドリアへの局在が示唆された。 【計画3】シロアゴガエル全ゲノム配列の解読 シロアゴガエルの高品質なゲノムアセンブリが完成し、他の動物との比較解析が可能となった。遺伝子モデルも作成でき、ミトコンドリアゲノムと核ゲノムの共進化を検討できるようになった。ATP8をミトコンドリア移行型核外来遺伝子として発現させ、培養細胞で機能解析する手法を確立し、シロアゴガエルATP8がヒトのミトコンドリアへと局在できないことを見出した。このことから、シロアゴガエルATP8の局在を補助する因子がシロアゴガエル核遺伝子に存在する可能性が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
【計画1】ゲノム編集によるネッタイツメガエルMitoゲノム変異体の作出 MITO-EGFP系統を用いて、ミトコンドリア局在型Cas9がミトコンドリアへ局在しているのかを評価する。RP-loop配列については解析を中断し、MITO-PorterによるsgRNAの輸送を検討する。 【計画2】MITO-Porterを用いたMitoゲノム遺伝子の機能解析 MITO-PorterにsgRNAや外来ミトコンドリアRNAを封入し、培養細胞やツメガエル胚に導入して、ミトコンドリアに局在しているかどうかをミトコンドリア分画RT-qPCRによって検討する。 【計画3】シロアゴガエル全ゲノム配列の解読 シロアゴガエルで重複・欠失している遺伝子や、進化速度が速くなっている遺伝子を割り出し、それらの遺伝子の特徴をGO解析等で明らかにする。また、ATP8遺伝子と共進化している可能性のある遺伝子が見つかれば、シロアゴガエルATP8のミトコンドリア局在を補助する役割があるのかどうか、培養細胞を用いて検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
①次年度使用額が生じた理由 少額の予算を次年度使用額とすることで、効率的な予算執行を図ったから。 ②使用計画 次年度使用額は主に物品費として研究の遂行に使用する。
|