研究課題/領域番号 |
22K06351
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
生田 哲朗 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋生物環境影響研究センター), 研究員 (80584846)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 化学合成 / 共生細菌 / シンカイヒバリガイ / 水平感染 / トモグラフィー |
研究実績の概要 |
2022年度は、シンカイヒバリガイ類と化学合成細菌の共生が成立する際の細胞レベルの形態的プロセスを3次元的に明らかにすることを目的とし、以下の研究を行なった。 ・試料採取のための深海調査航海の実施:伊豆小笠原海域明神海丘(深度約1,300 m)と相模湾初島沖(深度約900 m)に無人深海探査機で潜航し、それぞれの海域でシチヨウシンカイヒバリガイ(Bathymodiolus septemdierum)およびシンカイヒバリガイ(B. japonicus)を予定通り採集し、各種分析項目に応じた固定を行なった。また明神海丘においては、生息現場に設置していた再感染実験の個体も回収し、固定した。 ・蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法による共生細菌遺伝的バリエーションの解析:シチヨウシンカイヒバリガイ稚貝鰓上皮細胞1細胞ごとに含まれる個々の共生細菌の遺伝的多様性を可視化するため、共生細菌1つ1つのシグナルを識別する高解像観察が可能なFISH法を検討した。現在、技術的検討を続けており、プローブの調製も進めている。 ・トモグラフィー法による菌保有細胞の3次元観察:シチヨウシンカイヒバリガイにおける初期の共生菌取り込みプロセスを3次元的に明らかにするため、稚貝鰓の超薄連続切片を作成し、共生細菌を宿す鰓上皮菌保有細胞の超微細構造を走査型電子顕微鏡で撮影した。撮影画像から目的の構造をトレースして分割し、3次元再構成を行なった。その結果、分析個体数はまだ少ないものの、取り込み初期の細胞形態プロセスについて当初の仮説とは異なる様子が見出された。今後観察例数を増やし、新たな取り込みモデルを構築することが必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・トモグラフィー法による菌保有細胞の3次元観察は2022年度実施の計画通り開始したが、稚貝鰓の切片試料の調整と電子顕微鏡による観察に時間を要した上に、解析対象となる細胞が予想外に少なく、計画より少数の観察例にとどまっている。しかし、今年度観察した中では取り込み初期の細胞形態プロセスについて当初の仮説とは異なる様子が窺われ、新たなモデル構築への展望が開けた。 ・蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法による共生細菌遺伝的バリエーションの解析は2023年度実施予定のところ、先行して技術的な検討とプローブの調製を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法による共生細菌遺伝的バリエーションの解析:今年度先行して開始した技術的な検討とプローブの調製を進め、シチヨウシンカイヒバリガイ稚貝サンプルを用いてFISH法による共生細菌亜集団の分布解析を行う。画像取得には高解像観察が可能なレーザー共焦点顕微鏡を用い、1宿主細胞内における共生細菌の分布パターンを3次元的に明らかにする。また、FISH法による染色を施した細胞をマイクロダイセクションにより切り出して回収し、次世代シークエンスにより細胞内での共生細菌の遺伝的多様性を解析する。 ・トモグラフィー法による菌保有細胞の3次元観察:今年度に引き続き、シチヨウシンカイヒバリガイ稚貝鰓の超薄連続切片を作成し、共生細菌を宿す鰓上皮菌保有細胞の超微細構造の3次元的解析を進める。観察対象の細胞については保有菌数のより少ないもの、より多いものと、共生細菌取り込み過程をできる限り広くカバーするものを選択し、研究開始当初に提示されていた仮説とは異なる、取り込みプロセスについての新たなモデル構築を目指す。また、シンカイヒバリガイにおいても同様の解析を行い、両種を比較することによって、シンカイヒバリガイ類における細胞内共生の進化過程を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
トモグラフィー法による菌保有細胞の3次元観察は2022実施の計画通り開始したが、稚貝鰓の切片試料の調整において、薄切箇所のトリミングや角度調整等で予想以上に慎重な作業が必要なことが分かったため、今年度は外部委託作成は行わず、所属機関の電子顕微鏡担当部署と検討を重ねながら少数の個体についてのみ試料作成を行った。このため連続超薄切片作成の外部委託経費は次年度に繰り越した。今年度の検討で技術的な問題点は概ねクリアできたため、次年度は個体数を増やして試料調整と観察を行い解析を進める計画である。
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