研究課題/領域番号 |
22K06357
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
福田 知子 三重大学, 高等教育デザイン・推進機構, 特任講師(教育担当) (10508633)
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研究分担者 |
石川 直子 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特任講師 (20771322)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 系統解析 / 系統地理 |
研究実績の概要 |
以前行ったMicranthes(チシマイワブキ)属の系統解析と生物地理の解析の中で、M.fusca(クロクモソウ)は、周北極地方に分布するM.nelsoniana(シベリアイワブキ)から分化し、千島列島南部~日本列島で分布を広げたと考えられる。申請者は、クロクモソウが温帯域で種分化した背景に興味を持って研究を進めている。 この目的のため、まず、クロクモソウ-シベリアイワブキ間や、クロクモソウ内部の系統関係を明らかにすることとした。クロクモソウは現在、3変種に分けられているが、その形態的相違が系統関係を反映するものかどうかも検討対象としている。現在までクロクモソウ34地点からの約350サンプルについてITS配列と、変異の認められた葉緑体DNA2か所の塩基配列の解読を行っている。昨年度は、これに追加として3地点(秋田、山形、石川)からの35サンプルを追加した。事前解析による葉緑体最尤法系統樹の結果では、クロクモソウの種内分類群であるエゾクロクモソウが高いBS確率でまとまることから、エゾクロクモソウは比較的新しい時代に東北~北海道に分布を広げたと考えられる。 申請者はクロクモソウの種分化に影響を与えた要因の一つとして花粉媒介者の変化があったと予想している。以前の研究(Mochizuki & Kawakita 2018)により、クロクモソウの訪花昆虫はキノコバエが中心となっているが、クロクモソウの近縁種(シベリアイワブキ、ムラサキクロクモソウ)の訪花昆虫相を調べた結果、各種の訪花昆虫相はそれぞれ異なっていたことから、現在、その観察結果をまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前回の科研費18K06377による成果の投稿につき、審査員からの指摘により、サンプルの追加、再解析が必要となり、再実験、議論の書き直しに多くの時間を取られた。論文は4月初旬に再投稿を行い、その後は通常の実験体制に戻っている。なお、実験を進めるためのサンプル採取は、昨年度の夏に計画通りに行ったため、サンプル不足のために今後の実験が遅れるおそれは無く、今後は早急に系統解析の完了を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ITS,葉緑体DNAの系統樹を作成し、その比較によってクロクモソウの分布変遷の歴史について考察する予定としているが、ITSによる最尤法系統樹を事前解析した所、地理的なまとまりが見られず、一部を除き分岐のBS確率が低いため、明瞭な解析結果が示せないおそれがある。そこで、今後はMIG-seqを行い、より詳細な解析を行う必要があると考えられる。各種系統解析は今年度中に完成し、論文執筆まで進めたいと思っている。 なお、研究計画については、クロクモソウの種分化・定着に菌類が関わっている可能性を指摘されたことから、クロクモソウの種子を採取し、現在、播種実験を行っており、経過観察中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験サンプルの解析数が予定より少なく、薬品についても予備があったことから新たに注文する必要が無かったため。なお、今後MIG-seq解析を行うに当たって、数十万円の支出を予定している。
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