研究課題/領域番号 |
22K06364
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
堤 千絵 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (30455422)
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研究分担者 |
小木曽 映里 独立行政法人国立科学博物館, 分子生物多様性研究資料センター, 特定非常勤研究員 (00646929)
片山 なつ 千葉大学, 大学院理学研究院, 日本学術振興会特別研究員(RPD) (20723638)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 菌根共生 / ラン科植物 / 初期発生 |
研究実績の概要 |
ラン科スズムシソウ類は、適切な菌とでは正常に発生するが、非適合な菌とでは発芽しない、あるいは途中で停止する。スズムシソウやジガバチソウ、クモキリソウを用いて、発生が正常に進む本来の菌、ならびに途中で発生が停止する非適合な菌と共生培養を行い、さまざまな発生段階にてトランスクリプトーム解析を行い、菌根共生の成立過程で働く遺伝子群と、発生が停止する段階で働く遺伝子群を、植物と菌それぞれで 調査し、種子発芽時の菌根共生系がどのような遺伝的制御によって成立しているのかを明らかにする。合わせて菌の全ゲノム解析を行い、菌種によって植物側の応答が異なる背景にはどのようなゲノムの差異があるかを調査する。 これまでにスズムシソウ共生菌、シマクモキリソウ由来の菌、クモキリソウ由来の菌それぞれと共生培養したスズムシソウ胚からRNAを抽出し、RNA-Seq解析を行った。データをアセンブルして得られた発現遺伝子数はおよそ14万で、blast等により菌と植物とに分けた結果、菌と推定される遺伝子数は約6.7万、ランは3万弱であった。共生菌の違いによる遺伝子の発現変動パターンにより、発現遺伝子のクラスター分けを行ったところ、シマクモキリソウ由来菌とスズムシソウ由来菌との共生培養胚で発現上昇する遺伝子群と、スズムシソウ由来菌との共生培養胚でのみ発現上昇する遺伝子群が特定され、GO enrichment解析により各共生成立段階において重要と期待される遺伝子群を絞り込んだ。 さらに、クモキリソウ由来の菌について、HiSeqXならびにMinIONを用いて全ゲノム解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
さまざまなステージでのトランスクリプトーム解析において、まだ解析できていない一部のサンプルや、ランと菌それぞれ単体でのリファレンス作成を行う。さらに、菌側の発現変動解析、共生阻害で作用する遺伝子の解析を行う。重要な遺伝子が検出されれば、植物あるいは菌のどのステージで発現しているかをRT-qPCRにより確かめる。 菌根共生の発生過程の形態学的調査では、ジガバチソウならびにクモキリソウでは、一部の菌種との詳細な発生過程の解析が 不十分である。そのため両種と複数の菌種と共生培養を行い、経時的にサンプルを収集して、準超薄切片を作成し、植物の発生と細胞内における菌根菌の動態を観察する。 菌の全ゲノム解析では、まだ解析できていないスズムシソウ由来の菌、シマクモキリソウ由来の菌について、すでに解析したクモキリソウ由来の菌をもとにアセンブリや遺伝子構造の予測を行い、それぞれのゲノムの差異を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた採集などが怪我のため実施できなかったため
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