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2023 年度 実施状況報告書

ゲノムデータに基づく東日本産両生類の比較系統地理:形成史の解明と多様性の再評価

研究課題

研究課題/領域番号 22K06365
研究機関独立行政法人国立科学博物館

研究代表者

吉川 夏彦  独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (60726892)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード両生類 / 比較系統地理 / 歴史生物地理 / 東北日本 / ミトコンドリアDNA
研究実績の概要

本研究課題では中部・関東以北の東北日本の両生類を対象とした種網羅的な比較系統地理解析を通じて、日本列島の生物相形成史における東北日本の位置づけの再評価を目的としている。特に複数の両生類を対象に、近年小型サンショウウオなど一部の種で明らかになってきたように中新世に系統的起源をもつような比較的古い多様性を残した系統、あるいは複数の氷期を乗り越えてきた遺伝構造の検出などを目指している。
2023年度はこれまでに引き続きアカガエル属2種(ニホンアカガエル、ヤマアカガエル)およびトノサマガエル種群の新規サンプル収集を進めるとともに、核SNP解析に先行してミトコンドリアDNAのシーケンスによる全体的な遺伝構造の解析を重点的に進めた。その結果、ニホンアカガエルでは糸魚川静岡構造線付近の産地を境界として東西で遺伝的に大きく分化すること、その東側の中でも関東以北の太平洋側+山形・秋田の「東日本系統」と新潟平野固有の「新潟系統」の間で大きく分化していた。東日本系統の中では、千葉から岩手・山形までの広範囲に単一の広域分布ハプロタイプグループがみられる一方で、これから系統的に分化した複数の地域固有ハプロタイプが同所的に千葉、栃木、宮城、秋田などで発見された。このことは氷期後に急速に一部の系統が分布拡大したことを示すとともに、氷期の間にも東北日本各地に遺存的に残った個体群が存在したことを示しており、申請者らの仮説を裏付けるものと考えられる。ニホンアカガエルの成果について日本爬虫両棲類学会で発表をおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2年目である2023年度は、前年度までに収集したニホンアカガエル、ヤマアカガエル、トノサマガエル属等のサンプルについてのミトコンドリアDNAの予備的分析を昨年度に引き続き進めた。この結果、議論を進めるうえで不足している地域のサンプルが明らかになり、本年度はそれについて重点的なサンプル収集をおこなった。それに関連し、種ごとの系統地理推定や生息適地推定にあたって重要な地域において、現在の生息状況が不明な地域の存在が明らかになったため、現地調査をすすめ標本収集や生息状況の確認をおこなった。これらの調査で得られた新規サンプルおよび生息地情報を加えて解析を進めている。これにより本研究で当初予定していた重点対象であるハコネサンショウウオ属、アカガエル属、トノサマガエル属については対象地域での網羅的なサンプルおよび生息地情報の収集ができた。ミトコンドリアDNAの予備解析の結果が出揃うのに想定以上の時間がかかったものの、その結果は東北地方の両生類の遺伝構造の種ごとの特徴をに明瞭に異なっているように思われ、現在はこの情報をもとに核SNPの解析に向けた実験計画を進めている。

今後の研究の推進方策

2024年度は昨年度までに予備解析が終わった種の結果について、MIG-seq法により核SNPの解析を進め、各対象種及び種群について集団遺伝構造の解明を進める。核、ミトコンドリアDNA双方の結果および新たに行う生息適地推定の結果をもとに、各種の系統地理仮説の検討等を進める。

次年度使用額が生じた理由

年度末に予定していた一部の調査出張について、他の業務との兼ね合いでキャンセルが発生したため若干の未使用額が生じた。当該調査は現地共同研究者に代理を依頼したため進捗への影響はない。未使用分については簡単な実験や解析の補助のアルバイト雇用などに充てて研究遂行の効率化を進めるのに使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ミトコンドリアDNAからみたニホンアカガエルの遺伝的変異.2023

    • 著者名/発表者名
      吉川夏彦・松井正文・西川完途・島田知彦・江頭幸士郎・佐藤直樹・富永篤
    • 学会等名
      日本爬虫両棲類学会第62回大会

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公開日: 2024-12-25  

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