研究実績の概要 |
陸上進出には、四肢形成、およびその骨格筋の獲得が重要であるが、その骨格筋の特性を決定するミオシン重鎖 (myh) 遺伝子の分子進化から、水棲・陸棲の運動様式に寄与する骨格筋の機構解明を目的として研究を行っている。 2022年度は、両生類(Xenopus tropcalis, Ambystoma mexicanum)およびハイギョ(Protopterus annectens) において特異的に保持されている新規型 myh 遺伝子群の発現解析および分子動力学(MD)シミュレーションを用いたMYHタンパク質の機能解析を行った。myh 遺伝子発現をアンプリコンシークエンスによって解析したところ、新規型 myh 遺伝子群は、両生類では尾部に発現していたが、ハイギョでは、尾部でも発現は認められたが、myh遺伝子における新規型myh 遺伝子の発現割合が低かった。また、両生類およびハイギョのMYH タンパク質のアミノ酸配列から立体構造を予測し、MDシミュレーションを行うことで、MYHタンパク質の特性を解析した。その結果、両生類およびハイギョの新規型 MYH タンパク質はヒトMYH1, MYH4 といった速筋型ミオシンと近い性質があることが分かった。以上のことから、脊椎動物の進化過程において、速筋型の性質をもつ新規型MYHを獲得し、四足動物へと分岐する過程で、発現部位が尾部や四肢に限局されていき、その後、完全陸棲脊椎動物では、新規型 myh 遺伝子群が消失した可能性が示唆された。
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