研究課題/領域番号 |
22K06384
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
藤山 直之 山形大学, 理学部, 教授 (90360958)
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研究分担者 |
阿部 誠 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (70414357)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 植食性昆虫 / 寄主特異性 / 性的隔離 / 生息場所隔離 / 繁殖干渉 / 体表炭化水素 / カメノコハムシ類 |
研究実績の概要 |
シロザを主な寄主植物とするカメノコハムシとヒメカメノコハムシ、イノコヅチを主な寄主植物とするイノコヅチカメノコハムシの、いずれもヒユ科食であるハムシ類3種を対象として室内飼育実験に着手した。性的隔離の程度を評価するための交尾実験では、種内交尾と比較してその頻度は低いものの、これら3種では全ての組み合わせで種間交尾が生じることが明らかになった。また、これら3種の成虫を用いた食草の摂食実験では、カメノコハムシとヒメカメノコハムシがイノコヅチを、イノコヅチカメノコハムシがシロザを僅かながら摂食することが明らかになり、この食性の不完全な分岐が自然条件下において不完全な生息場所隔離をもたらしていることが予測された。 上述のヒユ科食ハムシ類3種を対象とした、生息場所隔離の程度を評価するための野外調査では、室内実験の結果に基づく予測と矛盾せずに、イノコヅチ上に生息およびそこで交尾するカメノコハムシが観察されたものの、イノコヅチカメノコハムシとの種間交尾は観察されなかった。また、シロザ上では、カメノコハムシとヒメカメノコハムシとの種間交尾が観察され、実験条件下と同様に自然条件下においても性的隔離が不完全であることが示された。 ハムシ類の体表炭化水素を分析するための予備実験として、簡便かつ不純物の混入が少ないマイクロ固相抽出による分析を行った。供試虫として、冷凍保存したハムシ類およびコガネムシ類を用いた。極性の異なるSPMEファイバー(Pupelco社製)を用いて供試虫の体表を拭い、体表成分を抽出した。このファイバーを直接GC-MSに導入して抽出成分を分析した結果、いずれの場合でも炭化水素の顕著なピークは確認できなかった。この理由として、虫体の体表炭化水素がSPMEで抽出できるほど多くなかった、あるいは炭化水素の分子量が大きく、ファイバーで十分抽出できなかったことが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度にあたる今年度は、主に、本研究で対象とする複数種のカメノコハムシのうちの一部に着目して研究に取り組んだ。その結果、扱ったハムシの種数は限られていたものの、研究期間の3年間で計画している5項目のうち3項目について着手することができ、予備的なものを含む様々な知見が得られた。さらに、成果の一部については学会で発表し、議論を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に実施する室内飼育実験および野外調査に関しては、ヒユ科食のカメノコハムシ類3種に関しては継続して追加データを蓄積することに加え、繁殖干渉の程度を評価する実験にも着手する。さらに、対象としてキク科食とシソ科食のハムシ類4種(アオカメノコハムシ、セスジカメノコハムシ、ヒメジンガサハムシ、ミドリカメノコハムシ)を追加し、実験条件下において性的隔離の程度を評価するとともに、自然条件下における生息場所隔離の程度を明らかにする野外調査を実施する。 ハムシ類の体表炭化水素組成の分析に関しては、方法を見直し、体表炭化水素を各種有機溶媒で抽出して進める。 令和4年度に未着手であった2項目の、カメノコハムシ類の系統解析および寄主植物の化学組成の解明に関しては、令和5年度に試薬と材料の準備を進めながら、予備的解析に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:主に、いまだに続いている新型コロナウイルスの蔓延の影響により、多くの学会がオンラインでの開催となったため、成果発表旅費の支出が無かったことによる。 使用計画:対面での開催へと復帰しつつある諸学会への積極的な参加費用として充てるほか、消耗品の購入にも充てる。
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