研究課題/領域番号 |
22K06387
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
香月 雅子 東京都立大学, 理学研究科, 客員研究員 (30743116)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 構造色 / RNAi / RNAseq |
研究実績の概要 |
本研究課題では、フェモラータを中心としたコウチュウ目を対象に、1)構造色の形成メカニズムの解明、2)構造色の生態学的意義を明らかにすることを目的としている。構造色形成メカニズムの解明にはRNAseqによる比較トランスクリプトーム解析とRNAi法による操作実験を行う計画であった。また、蛹時の構造色形成過程におけるTEM(透過電子顕微鏡)又はSEM(走査電子顕微鏡)による観察から、構造色と色の形成がどのように行われるのかを明らかにする予定であった。構造色の適応的意義の検証(目的2)は、構造色の色彩評価と野外・室内での行動観察によって明らかにする計画であった。 本年度では、フェモラータオオモモブトハムシに目的遺伝子の発現抑制を行い、コントロール個体と対象遺伝子RNAi個体の定構造色形成期間に光の反射率で形成される構造色の色を測定し、定量化と比較を行った。結果、コントロール個体は構造色が緑色を経て本来の色である赤紫の構造色を形成するのに対し、RNAi個体は緑色で構造色が維持されることが明らかとなった。次に、構造色の形成が完了した個体の鞘翅断面をSEMで観察し、構造色の形成される層に違いがあるか調べた。結果、コントロール個体と対象遺伝子RNAi個体との間では、構造色が形成されるクチクラ層の暑さが異なっていることがわかった。コントロール個体と対象遺伝子RNAi個体との間で、どのような遺伝子の発現に違いがあるのかを調べるため、RNAseqによる比較トランスクリプトーム解析も行った。解析から、遺伝子発現が有意に異なる遺伝子が225個見つかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、フェモラータを中心としたコウチュウ目を対象に、1)構造色の形成メカニズムの解明、2)構造色の生態学的意義を明らかにすることを目的としている。構造色形成メカニズムの解明にはRNAseqによる比較トランスクリプトーム解析とRNAi法による操作実験を行う計画であった。また、蛹時の構造色形成過程におけるTEM(透過電子顕微鏡)又はSEM(走査電子顕微鏡)による観察から、構造色と色の形成がどのように行われるのかを明らかにする予定であった。構造色の適応的意義の検証(目的2)は、構造色の色彩評価と野外・室内での行動観察によって明らかにする計画であった。 初年度であるが、上記の目的の1について、当初の予定以上にすすんでいる。対象種の構造色形成の定量方法が確立でき、定量結果を得られた。また、目的遺伝子の遺伝子発現抑制を行なった個体でどのような構造色形成の違いがあるのかも明らかにすることができた。また、RNAseqによるトランスクリプトーム解析から得られた結果を基に、来年度も研究を進めることができる。当初の計画以外に、構造色形成に関連する可能性のある経路をピックアップすることができたので、その経路に関わる遺伝子についても来年度にRNAiによる遺伝子機能解析を行い、構造色の形成メカニズムの解明に取り組んでいく。 目的2である構造色の生態学的意義の解明に関して、本年度は、フィールドでの対捕食形質に関する研究の経験が豊富な研究者のアドバイスを基に、構造色の捕食者に対する適応的意義を探るための方法の検討を行なった。来年度は、検討結果を基に、フィールドでの実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今度は、初年度の研究成果を基に、以下のことに取り組んでいく。 1)RNAseqによるトランスクリプトーム解析から得られたDEGで構造色形成に関わることが期待される遺伝子についてRNAiを行い、機能解析を進める。2)新たな候補経路で構造色に関わる遺伝子についてRNAiを行い、機能解析を進める。3)さらなる画像解析により、構造色形成の層の違いについて詳細な解析を進める。4)野外・室内での観察実験から、構造色の適応的意義について検証を進めていく。特に、室内実験では、構造色の性差に注目し、構造色の性シグナルとしての役割について検証を進める。野外実験では、構造色の捕食者に対する捕食回避としての役割について検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度内に所属変更があり、実験場所や方法の再設営に時間がかかり、該当年内での予定していた実験を翌年度に持ち越すことになった。そのため、次年度への研究費の繰越が必要となった。
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