研究課題/領域番号 |
22K06388
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中瀬 悠太 信州大学, 理学部, 特任助教 (70806736)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 寄生 / 血縁 / 過寄生 / ネジレバネ目 |
研究実績の概要 |
本研究は単寄生(1個体の宿主に1個体の寄生者が寄生する)のネジレバネという寄生性昆虫が過寄生(1個体の宿主に複数個体が寄生する)となった時の宿主内での寄生者間の相互作用に注目するものである。本研究を始めるにあたり、過寄生となったネジレバネにおいて、成虫の出現と繁殖の時期、寿命が劇的に変化することを論文として報告した。密度依存的に生活史戦略を変化させるという点でバッタやヨトウガなどで知られる相変異の定義にも当てはまる。これはネジレバネが自身の置かれた状況を認識して生活史戦略を変化させていることを示したという点で本研究の前提となる発見である。これをふまえ、本研究では過寄生によってネジレバネが生活史戦略を変化させる時、それぞれの個体は他個体との関係性の中でどのようなにふるまうのかを同一宿主内のネジレバネ間の競争(成長サイズ)の非対称性とネジレバネ個体間の血縁から明らかにする。2022年度は複数回のサンプリングを行い、過寄生の頻度、複数寄生の場合はネジレバネの個体数のカウント、各個体の成長段階や性別の記録を行った。過去に得られていたサンプルも含め、得られたネジレバネの全個体について体サイズ(体積)を画像解析による計測から推定し記録した。次世代シーケンサーを用いたネジレバネ間の血縁推定も行い、2個体から11個体の過寄生のケースについて十分な個体数をもとにそれぞれ同一宿主内のネジレバネの推定血縁度の平均値を算出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、2年程度かけて行う予定であった計測値や血縁度のデータ収集が、サンプリング努力の集中的な投下と、寄生率の年変動によって偶然に高い寄生率が発生し、それに伴って過寄生も多く見られる幸運に恵まれたため一気に進展した。計測や解析についても目立ったトラブルなく進行しており、幸運にも当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始時点で取る計画であったデータは一通り取り終わり、今後はデータの解析と公表の準備を主に行なっていく予定である。その過程で追加のサンプリングと解析の必要が生じた場合には追加のサンプリングから行なっていく。申請者は2023年の4月から所属と居住地が変わったため、これまでサンプリングを行なってきた場所でのサンプリングが時間的、金銭的に高コストとなった。今後の本研究の遂行のためにも新規のサンプリング地点の探索と選定を行なっていく。ただし、既に新規サンプリング地点の候補地選定と下見は進めており、研究計画の到達目標に及ぼす影響はほとんどないと考えている。研究環境の変化に伴い、当該年度以降分として請求した助成金の一部は研究環境の構築のために必要な冷凍庫などの備品の購入に充てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
秋ごろからの体調不良とそれに伴う長期入院のため学会参加の見送り、及びフィールドワークや実験ができなかったことに伴う消耗品の消費量の低下、解析用PCの選定が間に合わなかったことにより次年度使用が発生した。次年度使用となった金額については前年度の購入が間に合わなかった用途に充てる予定である。また、当該年度以降分として請求した金額の一部は所属の変更と研究環境の変化によって必要となった研究環境の整備のための備品の購入に充てるように変更する。
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