研究課題/領域番号 |
22K06389
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
三宅 崇 岐阜大学, 教育学部, 教授 (00380569)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 送粉共生 / 送粉者 / 報酬 |
研究実績の概要 |
クワズイモ花序の各部位の開花中の変化を詳細に調べるため、2022年5月に沖縄で調査を行った。開花の4つのステージ(開花前、雌ステージ、雄ステージ直前、雄ステージ)において花序を採集し、花序内の各部位(付属体、雄花序上部、雄花序下部、中性花序)を切除し、組織観察用の固定を行い持ち帰った。その後雄花序部位についてはパラフィン包埋切片を作成し、ヘマトキシリン染色やPAS染色等の複数の染色法を行うことで、開花の進行に伴う形態や多糖糖の蓄積の変化を調べた。 また、分布の北限におけるクワズイモと送粉者の共生関係について調べるために、野外自然分布が報告されている高知県2カ所(5月)および神奈川県1カ所(8月)で調査を行った。いずれも開花個体が観察され、開花状態から沖縄と異なる開花フェノロジーを持つことが想定された。調査したうちの1カ所については沖縄と同種の送粉者が観察された。 クワズイモ不在状態での送粉者の生理状態の観察については、研究室で飼育し実験を行うことを検討し、他の研究者の協力のもと進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
クワズイモ側については、まず開花中の花序内の変化の観察については順調に進んでいる。ただし、今回行った固定方法では脂質の蓄積の観察については不向きであるため、別の方法を検討しており、凍結切片などの系を使えるように環境を整えている最中である。一方、花香については、過去に分析したシステムが現在稼働していないため、現在検討中である。 ハエ側については、採餌行動の詳細な解析を行う予定であったが、研究協力者が調査に参加できなかったことなどにより翌年度に回された。
|
今後の研究の推進方策 |
非開花期のハエの生理状態については、これまで採集されていないために未解明であった。これについて、飼育下で調べるとともに、非開花期に野外で採集を試みる予定である。その際、開花フェノロジーの異なる高知県、神奈川県の開花花序を利用することを検討している。また、前年に見つかったハエの北限集団は、サトイモ科とタロイモショウジョウバエ属の送粉共生系においても北限であるため、共生系の分布拡大を詳細に調査する必要があり、採集許可を取って両者の採集を行い、分子遺伝学的に検証を進める予定である。 開花中の花序内の変化の観察については脂質観察のための別の染色方法を試みるとともに、異なる切片作成方法も試みる。 またハエ側の解析については、現地調査と研究室飼育を進展させる。現地調査では、採餌部位の時間的変化を定量化するための野外実験を行う。また、研究室飼育に関しては、飼育系を確立し、生理状態にクワズイモの花香や摂食が与える影響について調べる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由としては、物品購入に関し、当初計画していた飼育装置が、大幅に値上がりしていたことに加え、飼育に関して研究協力していただける研究者を得たため、飼育装置を購入しなかった。また、コロナ制限の中、予定していた研究協力者が現地調査に参加できなかったこと、及び参加学会の一部がオンライン開催になったために出張費がかからなかったことなどにより、旅費が予定より少なかった。 使用計画としては、次年度にはコロナ制限が解除されるため、今年度予定していた調査内容も含めることで、研究協力者との現地調査を当初の計画よりも長い日程で行うこと、および調査内容を充実させるために学生も現地調査に参加させることで、今年度使われなかった旅費が使用される予定である。また、解析の一部について共同利用機器の利用や委託解析が新たに計画され、それらにより前年度使用されなかった分は有効に活用される予定である。
|