研究実績の概要 |
本年度の研究では、化学合成微生物群集とその生態系の自由エネルギーの動態に焦点を当て、Eco-geochemicalモデル(Eco-Redoxモデルに改称)を用いた数値シミュレーションを実施した。以下に成果をまとめる。 ・系の自由エネルギーと微生物群集の関係:化学合成微生物群集と系の自由エネルギーの関係性を明らかにするため、ギブスエネルギーを指標としたシミュレーションを行った。これにより、微生物の種数やリサイクル率が高いほど、ギブスエネルギー利用量が増加することが示された。この結果は、エネルギー供給量が少ない状態での微生物のエネルギー保存戦略を説明する。 ・微生物群集の相互作用とエネルギー利用効率:相利的な種間相互作用が多いほど、系の自由エネルギーの利用効率が向上することが示された。この研究では、種間相互作用のパターンがエネルギー効率に与える影響を評価することで、群集のエネルギー利用に関する法則性を読み解くことができることを明らかにした。 ・研究成果の発表と次のステップ:本研究成果をEcology Letters誌で発表した(Seto, M., & Kondoh, M. (2023). Microbial redox cycling enhances ecosystem thermodynamic efficiency and productivity. Ecology Letters, 26(10), 1714-1725.)。この論文では、エネルギー供給が少ない生態系における微生物のエネルギー保存戦略と相互作用がエネルギー利用効率を向上させることを示した。さらに、現在は窒素の反応系を対象とした反応ネットワーク研究を進めており、この結果についても論文化を進めている。
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