研究実績の概要 |
本研究では「種内の多様性が種分化を通じていかに種多様性に繋がるか」の解明に取り組んでいる。種内の遺伝的な多様性から種多様性への階層性は、生態学において極めて基本的な概念であり、集団遺伝学のモデルで予測されているが、実際の生物におけるそのスケールや遺伝子流動に対する分散制限の実際の要因は未解明である。具体的には、鳥類を対象として、COI遺伝子によるDNAバーコードに基づき、各種内の遺伝的多様性構造としてα多様度とβ多様度を計測し、その空間的な分布を解析することを計画した。本年度は、BOLD system に登録された、5,9445種(bin)、49,931地点の情報を解析途中である。なお、この数は申請時点での数(5,875種、48,044地点)からも増加しており、この増加の度合い、またその空間的な分布を解析することで、多様性の全体を推定することも計画に加える。これまでの解析では、全球で記録されているDNAバーコード配列について、スケールを変えた全球のメッシュごとにα多様度を算出し、同時にサンプル間の総当りでの遺伝的な違い(塩基置換数)と空間的距離の関係の傾きをβ多様度として、種ごとにこれらの関係を解析を進めている。β多様度は鳥類の分類群ごとに異なっており、特に各種の分散能力がこの関係に影響している。この関係自体は自明といえるが、この効果がさらに、アルファ多様度とどのように関わるか、さらに分析をすすめる。また、ここではβ多様度に対する空間的距離に加えて分散の障壁となる、水域と山域の効果を確かめている。これらの成果は、2023年度中に学術論文として発表の予定である。
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