研究課題/領域番号 |
22K06409
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
山口 幸 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (20709191)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 内分泌調節 / 環境応答 / 浸透圧調節 / 塩類細胞 |
研究実績の概要 |
これまでの行動生態学や生活史戦略の理論では、生態的・社会的環境に対する適応を自然淘汰で説明する際に、生理的制約や分子的/生理的機構を無視することが多かった。そこで本研究では、幅広い分類群を対象に、分子的/生理的機構を取り入れて、生態的、物理的、社会的環境の変化への適応的応答を理解する進化生態学の新しいパラダイム確立を目指す。対象として陸上動物や植物を含め、性に限らずより一般の形質を扱う。今年度は「淡水と海水を行き来する魚の浸透圧調節の塩類細胞の最適組成」について取り組んだ。 淡水域と海水域を行き来する魚は、浸透圧調節が必要である。浸透圧調節に貢献する細胞は塩類細胞とよばれ、海水適応細胞、淡水適応細胞、可塑性細胞の3種類がある。淡水と海水を行き来するとき、それぞれの細胞数が変わるが、それには時間がかかる。また細胞を作り出すにも維持するにもコストがかかる。将来の環境変動の可能性を考慮しながら、全体のコストを最小化するよう3種類の細胞数を決めると考えて、ダイナミックプログラミングにより、この問題に迫った。この動的最適化による研究については、本科研費課題を執行する前に、予備的解析ですでに成果を得ており、Journal of Theoretical Biologyに2022年に掲載されている(Uchiyama, Iwasa, Yamaguchi 2022, 基盤C 19K06838)。 浸透圧の内分泌調節として、成長ホルモン、コルチゾル、プロラクチンといった3つのホルモンが関わっている。この知見をUchiyama et al.(2022) のモデルに組み込むことで、内分泌調節と個体の環境応答をつなぐモデルに発展させるために、まずはこれらのホルモンの相互作用について文献調査を行った。その結果、実証的知見の不足している部分があるため、妥当な関数形の選択が今後の課題となることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
魚における浸透圧調節を司る塩類細胞組成において、内分泌調節と個体の環境応答をつなぐモデルを令和4年度中に完成させることを目指していたが、浸透圧調節に関わる3つのホルモンの相互作用について未知な部分もあり、どのような関数形を選ぶことが妥当かを検討する課題が残り、モデルの完成には至っていない。そのため、研究発表の成果を残せなかった。
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今後の研究の推進方策 |
[1] 淡水と海水を行き来する魚の浸透圧調節の塩類細胞の最適組成モデル(内分泌調節と個体の環境応答をつないだモデル)を完成させ、数理的解析を終えて、原著論文にまとめることを目指す。 [2]新しい課題として、「爬虫類における温度依存性決定のメカニズム」の研究を進める。爬虫類の多くは、母親が卵を産み落とした場所の温度で、孵化時に性別が決まる。研究代表者は、性ホルモンとアロマターゼ遺伝子の発現に注目して酵素反応系を考慮し、温度によって酵素反応の速さが変わるときに、雄性/雌性ホルモンの相対量が変化するため、性ホルモン量の多い性に分化するというモデルを解析した(Yamaguchi & Iwasa 2018, 若手研究(B)16K18624の成果)。この研究経験を活かして、本研究では最近発見された温度性決定にかかわる温度センサーチャネルに注目する。ワニにおいて、高温で反応するTrpv4タンパク質が雄になる温度を受容すると、精巣をつくる遺伝子発現が活性化され、雄の性を誘導することがわかっている。またカメでは逆に低温で反応するチャネルがあるということが予測されている。温度センサーチャネルの働き方で温度性決定の複数のパターンを説明するモデルを構築し、未発見の爬虫類の温度性決定を予測することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症拡大防止により、共同研究者との打ち合わせ出張がキャンセルになったため。 次年度は共同研究者との打ち合わせ出張を多数実施する。また次年度(2023年度)から学会開催がオンサイトで行われることが多くなるため、研究発表の出張を実施する。 また次年度は研究を進め、原著論文の英文校閲費や原著論文のオープンアクセス費を支出する。
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