研究課題/領域番号 |
22K06416
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
森田 航 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (20737358)
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研究分担者 |
山中 淳之 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (80343367)
目加田 和之 岡山理科大学, 理学部, 教授 (90360651)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 歯 / 遺伝子型-表現型マッピング / スンクス / QTL解析 / GWAS |
研究実績の概要 |
今年度はまず、切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯の各歯種についての遺伝子型-表現型マッピングに必要な実験動物であるスンクスの作出を進めた。F0世代として用いるカトマンズ系統の雌と長崎系統の雄を交配させてF1世代を生み出し、さらに同一家系のF1同士を交配させることによりF2世代を約50匹得ることができた。未咬耗なままの歯の形態を定量解析するために、生後16日齢でF2個体はサンプリングした。筋組織よりゲノムDNAを抽出し、ライブラリ作成の後にシーケンシングを外注し、ゲノムデータを得た。歯のシェイプ、サイズ、並びに特定の歯種(上顎第3切歯と第3小臼歯)の有無のデータを得るため、骨格標本を作製し、マイクロCT撮影で得られた画像から3次元モデルの再構築を進めた。構築した3次元サーフェスモデルは、形態地図法という定量化手法により2次元のマップ画像へと展開し、主成分分析により互いに独立した形状変異成分を抽出し、各主成分軸をシェイプデータとした。サイズデータには、歯冠の重心サイズを用いた。また、QTL解析のため交尾可能年齢を過ぎたF0,F1世代個体も順次サンプリングしゲノムデータを収集した。これらゲノムデータと形態データの相関を調べるため、予備的ではあるが、得られた個体を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)、並びに、量的形質遺伝子座(QTL)解析を行った。その結果、歯の正常な発声に必須な遺伝子や、歯のパターニングに用いられるシグナル伝達経路関連遺伝子、体の成長に関与する遺伝子などが候補として有意な相関が見いだされた。これらの予備的な解析結果を国内外の学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析に必須となるF2世代の作出が軌道に乗り、安定的な供給体制を整えたこと、また、ゲノムデータと形態データの取得、さらにそれらの関連解析までの一連のパイプラインを確立したことが大きい。今後はサンプル数を増やしより確度の高いデータへと洗練させていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
スンクスの妊娠期間や、交配の成功率、頻度から年間50匹のF2世代作出がおおよその限度と考えられる。研究の残り期間においても安定的に作出データを増やすとともに、3次元データの再構築のスピードも上げる必要がある。形態関連遺伝子の候補の発現パターンの歯種間差の同定も本研究のポイントであるため、出来る限り速やかにGWAS,QTL解析を行いたい。また、QTL解析の結果得られる連鎖地図のような遺伝地図の精度は、用いるスンクスゲノムの参照配列の質にも影響を受ける。参照ゲノム配列の整備など、関連する研究基盤の整備も進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な物流の乱れや材料費の高騰、実験試薬の不足などにより、予定していた試薬等をすべて購入することができず、シーケンシング委託費などに用いることができなかったのが大きな原因である。徐々に試薬の入手状況などが改善しつつあるため、今後は実験も予定通り進めることができると予想している。
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