研究課題/領域番号 |
22K06433
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宋 文杰 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90216573)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 聴覚 |
研究実績の概要 |
私たちは、内側膝状体の一つの亜核に選択的に遺伝子を発現させる系を確立した。この系を利用して、レポーター遺伝子を発現させることによって、亜核ニューロンの投射先などを明らかにした。本研究では、当該亜核にChR2またはArchTを導入し、オプトジェネティクスを行うことや、hM3Dqまたは hM4Diを導入し、ケモジェネティクスを行うことによって、連合学習における当該亜核の役割を明らかにすることを目的とした。これまで、連合学習を成立させ、hM4Diを用いたケモジェネティクスによって、当該亜核の活動を操作し、それが連合学習において重要な役割を果たしている可能性を示唆するデータを得た。一方、私たちの分子発現で同定した当該亜核は、前額断において腹側核の内側部に位置することから、内側核と考えていたが、その前額断における断面はY字に似た形を示しており、従来の論文ではそのような報告は見られない。Y字領域が内側核に当たるかを検討するために、多くの分子の発現パタンを解析した。その結果、従来大型ニューロンの存在で特徴づけられている内側核はNeuNの強発現で同定でき、PKCδの発現領域(腹側核と背側核)との間に、Y字形の陰性領域を見出した。この領域を内部核(MGi)と名付けた。これまでの遺伝子を選択的に導入できる亜核はMGiである可能性が極めて高い。これらの結果をHearing Research (Tomioka et al., 2023)に発表した。一方、大脳皮質聴覚野ニューロンの活動に対して、MGiがどのような影響を及ぼすかを調べる準備実験として、聴覚野ニューロンの活動を記録する実験を開始し、繰り返し音に対して、多様な反応ダイナミクスを示すことを明らかにした。その結果をHearing Research (Zhou et al., 2023)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に述べているように、遺伝子を選択的に導入できる内側膝状体の亜核の正体を新規な亜核(MGi)として同定できたこと(Tomioka et al., 2023)に加え、聴覚野ニューロンの活動ダイナミクスに関する新規な発見(Zhou et al., 2023)、そして研究目的である「連合学習におけるMGiの役割」について、学習を成立させ、ケモジェネティクスによって、MGiの活動を操作し、それが連合学習において重要な役割を果たしている可能性を示唆するデータを得たため、研究が「おおむね順調に進展している」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
「連合学習におけるMGiの役割」について、オプトジェネティクスとケモジェネティクスを駆使し、明らかにする。そのメカニズムを検討するために、まず回路レベルにおいて、MGiニューロンが結合する聴覚野ニューロンや線条体ニューロンを明らかにする。そして、連合学習におけるMGi-聴覚野の回路と、MGi-線条体の回路の役割を検討する。さらに、聴覚野ニューロンと線条体ニューロンの聴覚応答に対して、MGiニューロンがどのように寄与し、それが学習や行動制御にどのように寄与するかを探索する。
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