研究実績の概要 |
私たちは、内側膝状体の一つの亜核に選択的に遺伝子を発現させる系を確立した。本研究では、当該亜核にChR2またはArchTを導入し、オプトジェネティクスを行うことや、hM3Dqまたは hM4Diを導入し、ケモジェネティクスを行うことによって、連合学習における当該亜核の役割を明らかにすることを目的とした。これまで、当該亜核は、前額断において腹側核の内側部に位置することから、内側核(MGm)と考えていたが、多種の分子発現パタンを調べた結果、当該亜核は、従来の大型ニューロンの存在で特徴づけられているMGmの外側部に隣接することが分かった。これを内部核(MGi)と名付け、Hearing Research (Tomioka et al., 2023)に発表した。本研究の目的を達成させるため、音と水報酬の連合学習課題を成立させた。hM3Dqを導入し、ケモジェネティクスでMGiの活動を増進させると、学習の成績が向上するデータを得た。一方、hM4Diを導入した動物では、変化は見られなかった。今後、これらのデータをさらに充実させ、オプトジェネティクスによる効果も加え、確かな結論を得ていく。一方、大脳皮質聴覚野ニューロンの活動に対するMGiの影響を調べる準備実験として、聴覚野ニューロンの活動を記録する実験を開始し、その多様な反応ダイナミクスを示した。その結果をHearing Research (Zhou et al., 2023)に発表した。また、オプトジェネティクスの準備実験において、音刺激に応じる飲水行動における島皮質の役割を解明し、iScience (Takemoto et al., 2023)に発表した。
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