研究課題/領域番号 |
22K06435
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
福田 諭 帝京大学, 医学部, 助教 (50425641)
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研究分担者 |
大野 孝恵 帝京大学, 医学部, 准教授 (60508109)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 運動神経細胞 / 皮質脊髄路 / オプトジェネティクス / パッチクランプ / 運動系 / partition 細胞 / 急性スライス / 樹状突起 |
研究実績の概要 |
大脳運動皮質と脊髄運動ニューロンを直接つなぐ皮質-運動ニューロンシナプスは、長い間、高等霊長類にのみ見られると信じられてきた。しかし、研究代表者らによって幼弱げっ歯類の前腕筋を支配する脊髄運動ニューロンに、運動皮質との直接接続が発見され、それらの直接シナプスは生後14日齢からから漸減し生後21日齢で消失していた。この消失するシナプスを「生後発達により消失するシナプスの系」として解析することが本研究の最終目的である。 2022年度では、皮質-運動ニューロンシナプスの退行過程を脊髄スライスを用いて電気生理学的に検討した。前腕筋からの逆行性標識や、特徴的なマーカー発現により運動神経細胞を脊髄スライス上で同定した。皮質脊髄路を電気的に刺激し、前腕筋支配運動神経細胞にホールセルパッチクランプ法によりシナプス応答を記録した。100 msec間隔の刺激に対する皮質脊髄路入力による後シナプス電流応答のペアパルス比は、抑圧を示した。このペアパルス比の低下は観察期間中(生後14日齢-21日齢)に徐々に減少し、発達に伴いシナプス前からの伝達物質の放出が減少していることが示唆されている。現在、後シナプスでのプロパティ変化を観察するため、miniatureの後シナプス電流応答の振幅を測定し、Sr2+(5mM)存在下で皮質-運動ニューロンシナプス応答を記録・解析中である。また現在、ChR2-EYFP-AAVで皮質脊髄路を、パッチピペットから神経ビオチンでMNを標識し、シナプスの位置を形態学的に観察中である。形態学的な結果が得られると、電気生理の各種値と結び付けて解析することで、「なくなるシナプス」のより深い考察が得られることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
途中までは計画通りに進んでいたが、近親者の健康状態の悪化や逝去などが相次いだ研究代表者がメンタルを崩し、途中精度の高い生理実験データが取れなくなった時期があり停滞した。現在は元のペースに戻りつつある。
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今後の研究の推進方策 |
皮質脊髄路と運動神経細胞の間のシナプス入力の、週齢を追った解析はある程度今年度前半中に目途がつきそうである。今後はIa線維、またpartiton 細胞からの運動神経細胞への入力の電気生理的な解析を行い、皮質脊髄路と運動神経細胞間のシナプス入力の変化と比較したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
やや計画が遅延したため、トランスジェニックマウスの使用が事前予想よりも行っていない。そのため、その生理学実験だけでなく、トランスジェニックマウスの維持のためのタイピングも想定していた回数よりも少なく、そこでタイピングのための試薬も少なく、次年度使用額が生じた。 partition cell を同定するためのトランスジェニックマウスの使用実験を想定している実験系として運用し、今年度は遅れを取り戻していきたい。
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