研究実績の概要 |
炎症性サイトカインIL-17Aが胎児脳ミクログリアのIL-17A受容体に結合するとミクログリアが活性型に転換され、活性化に伴いミクログリアの形態や運動性は大きく変化する。このことはミクログリア活性化に細胞の『形態形成』『運動』を担う構造、すなわち細胞骨格や細胞内輸送機構が関与する可能性を示唆している。そこでミクログリア活性化の基礎となる細胞内輸送機構を解明するために、マウス胎児脳の大脳皮質からミクログリア初代培養細胞を立ち上げた。培養細胞がミクログリアマーカーを発現していることは免疫細胞化学で確認され、ミクログリア初代培養細胞が正しく作成されていることが確認された。研究実施計画に準拠し、細胞内輸送に関わる分子として、分子モーターであるキネシン関連タンパクに注目した。ヒトやマウスの細胞には50種類以上の多種多様な分子モーターが存在し微小管をレールとして細胞内輸送を行っている(Hirokawa et al., Neuron, 2010)。これらのうち、脳に存在する代表的なキネシン関連タンパクであるKIF1A, KIF1B, KIF3A, KIF3B, KIF4, KIF5A, KIF5B, KIF17等について発現を検討することにした。これらのキネシン関連タンパクがミクログリアに発現しているかどうかは道のため、メッセンジャーRNAの発現の検討をRT-PCRで最初に行う方針とした。まず、上記分子のプライマーセットを作成し、コントロール実験で特異的にメッセンジャーRNAを増幅できることを確認した。現在、ミクログリア初代培養細胞に各種プライマーセットを適用し、ミクログリア中に発現しているキネシン関連タンパクの同定と、サイトカイン刺激による発現量の変化を検討している。
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