研究実績の概要 |
最近の国内外の研究から、脳を覆う軟髄膜(くも膜と軟膜)に常在する免疫細胞(マクロファージ)は、脳の恒常性や疾患に関係することが示唆されているが、その役割は十分に明らかにされていない。本研究の目的は、新たな組織透明化手法を開発するとともに、3次元イメージングと3次元組織染色法を駆使して、軟髄膜マクロファージの空間分布を特徴付けるとともに、本細胞のマーカー分子の同定を通じて、機能操作ツールを確立し、その役割を明らかにすることである。本研究は、軟髄膜の免疫学的バリア機構とその破綻による疾患の理解に繋がることが期待されるために、極めて意義深いものである。 2023年度では、研究実施計画に基づき、前年度に引き続き、新たに開発した「蛍光とRNAを保持可能な組織透明化手法」の検証実験を行うとともに、その原理となる基礎的知見を得るための解析を進めた。また、これまでの解析では頭蓋骨から取り出した脳組織を評価していたが、この手法では髄膜構造が壊れてしまう問題点があった。この点を克服するために、化合物スクリーニングを通じて、頭蓋骨透明化技術を新たに開発し、その検証実験を進めた。その成果は、現在論文投稿中である。上記の実験に加えて、全脳レベルでRNAをイメージングできる蛍光in situハイブリダイゼーション法(mFISH3D法, Murakami TC and Heintz N, bioRxiv 2022, doi: https://doi.org/10.1101/2022.11.23.517711)を導入することにも成功した。
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