研究課題/領域番号 |
22K06446
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
玉川 直 (中川直) 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (20611065)
|
研究分担者 |
水野 秀信 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特任准教授 (00567159)
神戸 悠輝 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (60549913)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | gap junction / イオンチャネル / 大脳皮質 / 半球間投射 |
研究実績の概要 |
大脳皮質の半球間投射は、左右の半球を正しく神経接続することで高度な脳機能を生む重要な構造である。その発達機構はマウスの第2/3層の神経細胞が持つ投射を対象に詳しく調べられ、生後1-2週に急速に発達すること、同時期の神経活動がその発達制御の一端を担うことがわかっている。しかし、神経活動レベルを調節する機構はよくわかっていない。また、半球間投射は主に第2/3層と第5層の神経細胞が作るが、第5層細胞の投射は方法論の難しさから研究が進んでいない。応募者はこれまでの研究で、半球間投射を持つ第5層の神経細胞が、投射の発達時期にgap junction (GJ)で密に結合し合うネットワークを持ち(Science 358, 610, 2017)、神経細胞間の活動レベルを均一化することを明らかにした(Neuroscience 406, 1, 2019)。GJネットワークによる神経活動レベル調節が半球間投射の発達を制御している可能性が示唆される。そこで本研究では、「1. 第2/3層の半球間投射のGJによる制御」、「2. 第5層の半球間投射の発達過程とGJによる制御」、「3. GJ操作による投射異常が個体レベルに及ぼす影響」を明らかにする。 1.に関しては、第2/3層細胞のGJ機能を亢進または抑制して半球間投射を解析したところ、一定の影響が見られた。今後は例数を増やしつつ詳細を解析していく。 2.に関しては、第5層細胞への子宮内エレクトロポレーション法による遺伝子導入はすでに習熟しており、第5層細胞に特異的に遺伝子導入するための遺伝子改変マウスを繁殖させている。 3.に関しては、必要となる新生児マウスからの脳活動イメージング手法の論文を投稿し最近受理された(STAR Protocols, 2023.03.28受理)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「1. 第2/3層の半球間投射のGJによる制御」に関しては、子宮内エレクトロポレーション法でマウス大脳皮質の第2/3層細胞に野生型コネキシンまたはドミナントネガティブ体コネキシンを強制発現させ、生後2週の時点で半球間投射を解析した。投射への一定の影響を確認した。第2/3層細胞がGJによる結合を新生児期に持つことは確認済みであり、GJが半球間投射の発達を制御していることが示唆された。以上のことから、おおむね順調に進んでいる。 「2. 第5層の半球間投射の発達過程とGJによる制御」に関しては、第5層細胞に特異的に目的遺伝子を導入するために必要になる、Tlx3-Creマウスを繁殖させている。しかし、遺伝子導入のためのプラスミドの準備が進んでおらず、やや遅れている。 「3. GJ操作による投射異常が個体レベルに及ぼす影響」に関しては、もともと令和5年度以降に開始する予定であり、現在は実験方法の検討と準備を主に行っている。その一環で、二光子顕微鏡を用いて生きた新生児マウスから脳活動を行うイメージング手法を確立し、投稿した論文がSTAR Protocols誌に最近受理された(2023.03.28受理; 共同筆頭著者&責任著者)。以上のことから、おおむね順調に進んでいる。 以上を総合し、おおむね順調に進んでいるとみなす。
|
今後の研究の推進方策 |
「1. 第2/3層の半球間投射のGJによる制御」に関しては、これまで使用したプラスミドが最適ではないことから、改変を加えたものを作成し使用する。予備実験で一定の結果を得ており、意義のある研究につながると期待できる。 「2. 第5層の半球間投射の発達過程とGJによる制御」に関しては、必要なプラスミドを準備し、Tlx3-Creマウスに子宮内エレクトロポレーションで導入して、第5層の半球間投射を第2/3層と同様に解析する。1. 2.をまとめて令和6年度中に論文投稿できるよう進める。 「3. GJ操作による投射異常が個体レベルに及ぼす影響」に関しては、1.と2.の結果次第で研究内容を検討する必要があるため、引き続き検討を続け、開始できる段階に来たところで迅速に着手していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナが原因で学会現地参加や外部研究機関での共同研究ができなかったことが、旅費の額が小さくなった大きな理由である。技術支援員を募集したが適任者が現れなかったことが、人件費・謝金が小さくなった大きな理由である。2023年度は、積極的に外部研究機関での共同研究を実施し、また技術支援員を雇うことで、科研費課題で進めている研究のスピードアップを行う。また、積極的に学会現地参加を行い、研究の発表機会を増やす。これらの活動のために、次年度使用額を費やす計画である。
|