研究課題/領域番号 |
22K06449
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
河野 洋幸 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (10736218)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | グルタミン酸トランスポーター |
研究実績の概要 |
脳内興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸は、小胞膜上のV-ATPaseが形成するプロトン電気化学勾配によって駆動されるが、グルタミン酸が小胞内プロトン動態に及ぼす影響は不明である。申請者は、グルタミン酸を小胞内に取り込む小胞型グルタミン酸トランスポーター(VGLUT)を阻害するために、海馬における主たるイソ型であるVGLUT1ノックアウトマウスの海馬ニューロンを培養し、さらに、海馬はVGLUT2を共発現するニューロンが混在するため、VGLUT2をノックダウンさせたニューロン培養を作成した。このグルタミン酸の小胞内への取り込みを完全に消失させたニューロンを用いた検討において、グルタミン酸がシナプス小胞に濃縮される過程が、小胞リサイクリングにどのように関連するかを検討した。小胞タンパク質であるsynaptophysinの小胞内領域にpH感受性蛍光タンパク質mOrange2 (pKa=6.1)を導入したプローブを用いて、小胞内プロトン動態を解析したところ、VGLUTの取り込みを阻害したニューロンでは、エンドサイトーシス後の小胞の再酸性化過程が顕著に遅延することが明らかとなった。また、VGLUTが発現しているシナプス小胞では、VGLUTが発現していないシナプス小胞に比べて、resting pHが変化していないが、小胞内pHを1変化させる酸または塩基の濃度を示すbuffering capacityが増加していることが明らかになった。この結果は、負に帯電したグルタミン酸の小胞内への取り込みにより、膜電位の消失を介したV-ATPaseの活性化に起因したプロトン流入が関連していることを示唆している。さらに、Cl-のVGLUTを介した流入が、V-ATPaseの活性を著しく向上させ、それによりグルタミン酸とプロトンのトランスポートが活性化される可能性を考え研究を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VGLUT1は様々な変異体がすでに報告されており、グルタミン酸とCl-のトランスポート活性が減弱する変異体に加えて、小胞内プロトンのアロステリック効果を阻害する変異体のクローニングが完了し次第、VGLUT1KO-2KDにおける再酸性化の遅延やBuffering capacityの低下を回復することが出来るかを検討する。クローニングは順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
WTとVGLUT1KO-2KDのBuffering capacityの値からシナプス小胞内のグルタミン酸の濃度を推測するためのシミュレーションを行い、既報の値よりかなり高濃度となることが示唆されたが、小胞の体積や浸透圧などを考慮して理論的に起こり得るのかの検証実験を計画している。また、小胞内のグルタミン酸やリン酸塩の濃度とBuffering capacityの関連を示す実験も計画している。
|