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2023 年度 実施状況報告書

登上線維の結合パートナー選択とプルキンエ細胞の個性

研究課題

研究課題/領域番号 22K06457
研究機関大阪大学

研究代表者

金子 涼輔  大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (40390695)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード神経回路形成 / 小脳 / プロトカドヘリン / 遺伝子改変マウス / 脊髄小脳変性症
研究実績の概要

本研究は申請者らの発見した「プルキンエ細胞個性」を足がかりとして、「登上線維が如何にして結合するプルキンエ細胞を選択するか?」に答える。
個々のプルキンエ細胞に結合する登上線維は1本のみである。この特異的結合はシナプス刈り込みを経て形成されるが、結合パートナーの選択メカニズムには不明な点が多い。申請者らは、クラスター型プロトカドヘリン(cPcdhα、β、γ。58種の多様化した細胞接着分子群)の、個々のプルキンエ細胞ごとに異なる組み合わせ発現を発見した。すなわち、個々のプルキンエ細胞にはcPcdh発現パターンの違いが作る「個性」がある。本研究では、このプルキンエ細胞個性の役割解明を目的として、プルキンエ細胞とそれに結合する登上線維におけるcPcdh発現パターンを明らかにする。
今年度は、問い「登上線維は、自身と同一の細胞個性を持つプルキンエ細胞と結合するか?」に答えるための準備段階として、計画している課題a, b, cのうちの課題a)特定のcPcdh発現を可視化し、その細胞の遺伝子発現を操作するマウスの開発に成功した。具体的には58種のcPcdhのうち特定の1種(cPcdhα2)を発現する細胞の可視化と、その細胞での遺伝子操作が可能なマウスである。昨年度までに完成していた14種類のcPcdha遺伝子の発現細胞にてtdTomatoとCreER(薬剤誘導型Cre-loxP組換え酵素)に対してゲノム編集を行い、cPcdhα2発現細胞のみがtdTomatoとCreERを発現するよう改変した。本マウスの脳を観察したところ、内在性cPcdhα2発現と同様のtdTomatoパターンが見られた。本マウスは特定のcPcdh発現を可視化し、その細胞の遺伝子発現を操作可能な世界初のマウスである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究では、問い「登上線維は、自身と同一の細胞個性を持つプルキンエ細胞と結合するか?」に答える。具体的には以下3課題を行う。a)特定のcPcdh発現を可視化し、その細胞の遺伝子発現を操作するマウスの開発。b)プルキンエ細胞と下オリーブ核におけるcPcdh発現解析。c)結合する登上線維とプルキンエ細胞におけるcPcdh発現解析。
現在までに、本研究遂行の上で必須となる、課題aが順調に進展している。具体的には、58種のcPcdhのうち特定の1種(cPcdhb3)を発現する細胞を可視化可能なマウスの作製に成功している。さらに、cPcdhα2を発現する細胞の可視化と、その細胞での遺伝子操作が可能なマウスの作製に成功した。
さらに、当初の予定よりも早くに課題bおよび課題cを進めている。課題bでは、プルキンエ細胞ならびに下オリーブ核におけるcPcdha2発現を、上記課題aにて作製したマウスにて可視化可能なことを見出した。また、課題cで用いる実験手法の実験技術を向上している。具体的には、登上線維を蛍光標識できる実験条件を見出した。すなわち、Cre依存的に緑色蛍光タンパク質GFPを発現するアデノ随伴ウイルスベクターを用いる。このウイルスベクターを下オリーブ核へ投与する手法(針の長さ、挿入角度、挿入深さ)を精査し、安定して下オリーブ核へ投与できる条件を見出した。
以上のように、当初の計画から前倒しで予定していた3課題全てを実施しており、いずれについても期待通りの結果が得られているため、当初の計画以上に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

今後は、本研究で計画している3課題、a)特定のcPcdh発現を可視化し、その細胞の遺伝子発現を操作するマウスの開発。b)プルキンエ細胞と下オリーブ核におけるcPcdh発現解析。c)結合する登上線維とプルキンエ細胞におけるcPcdh発現解析のうち、課題aに特に注力して進める。具体的には、2023年度に得られたcPcdha2発現細胞の可視化と遺伝子発現操作が可能なマウスの交配、サンプリング、脳切片観察を行い、本マウスでのtdTomatoおよびCreER発現が内在性のcPcdha2発現を反映しているかを明らかにする。目的を満たすマウスが得られ次第、課題b、課題cを実施する。

次年度使用額が生じた理由

実験条件の検討が当初の想定よりもスムーズに進んだため、それに要する費用の削減が可能であった。一方で、今後の解析を綿密に実施するためには多額の費用が必要となるため、次年度に使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Protein kinase Cγ negatively regulates the intrinsic excitability in zebrin-negative cerebellar Purkinje cells2024

    • 著者名/発表者名
      Watanave Masashi、Kawachi Mika、Konno Ayumu、Aoki Ryo、Fukai Yuuki、Matsuzaki Yasunori、Kaneko Ryosuke、Hirai Hirokazu
    • 雑誌名

      Frontiers in Cellular Neuroscience

      巻: 18 ページ: 1349878

    • DOI

      10.3389/fncel.2024.1349878

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Reciprocal Connections between Parvalbumin-Expressing Cells and Adjacent Pyramidal Cells Are Regulated by Clustered Protocadherin γ2023

    • 著者名/発表者名
      Kawamura Nanami、Osuka Tomoki、Kaneko Ryosuke、Kishi Eri、Higuchi Ryuon、Yoshimura Yumiko、Hirabayashi Takahiro、Yagi Takeshi、Tarusawa Etsuko
    • 雑誌名

      eneuro

      巻: 10 ページ: 0250~23.2023

    • DOI

      10.1523/ENEURO.0250-23.2023

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Visualization of trans homophilic interaction of clustered protocadherin in neurons2023

    • 著者名/発表者名
      Hoshino Natsumi、Kanadome Takashi、Takasugi Tomomi、Itoh Mizuho、Kaneko Ryosuke、Inoue Yukiko U.、Inoue Takayoshi、Hirabayashi Takahiro、Watanabe Masahiko、Matsuda Tomoki、Nagai Takeharu、Tarusawa Etsuko、Yagi Takeshi
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 120 ページ: e2301003120

    • DOI

      10.1073/pnas.2301003120

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Interaction between Teneurin-2 and microtubules via EB proteins provides a platform for GABAA receptor exocytosis2023

    • 著者名/発表者名
      Ichinose Sotaro、Susuki Yoshihiro、Hosoi Nobutake、Kaneko Ryosuke、Ebihara Mizuho、Hirai Hirokazu、Iwasaki Hirohide
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 12 ページ: e83276

    • DOI

      10.7554/eLife.83276

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] クラスター型プロトカドヘリンによるニューロンの生存と配置の制御2023

    • 著者名/発表者名
      金子涼輔、Schonewille Martijn、吉田 隆行、橋本 浩一、玉巻 伸章、柳川 右千夫、八木 健
    • 学会等名
      第46回日本神経科学大会
  • [学会発表] 神経細胞個性を生み出す遺伝的基盤 : プロトカドヘリンγクラスターの欠損は近傍遺伝子の発現量を増加させる2023

    • 著者名/発表者名
      堀野 聡子、八木 健、金子 涼輔
    • 学会等名
      第46回日本神経科学大会

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公開日: 2024-12-25  

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