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2022 年度 実施状況報告書

CRMP2リン酸化の神経回路形成および神経再生への役割解明とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K06464
研究機関早稲田大学

研究代表者

大島 登志男  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20311334)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード神経再生 / 神経回路形成
研究実績の概要

我々はCRMP2のリン酸化抑制が、脊髄損傷や視神経損傷などでダメージを受けた神経軸索の再生を促進することを報告している(Nagaiら2015, Kondoら2019)。これは、発生期の反発性軸索ガイダンス分子セマフォリンや、ミエリン由来の阻害因子(MAI)の神経細胞内の情報伝達にCRMP2のリン酸化があり、リン酸化により軸索退縮が起きるので、リン酸化を抑制することで神経再生促進につながるという仮説の元に行なった結果である。その後の研究で、正常眼圧緑内障の進行にも関与しており、その抑制が病態改善に寄与する可能性が示されている。我々は、神経細胞内のセマフォリンシグナル伝達がCRMP2のSer522のCdk5によるリン酸化が引き金で起きることを見出し(Uchidaら2009)、そのリン酸化部位がSer522を非リン酸化アミノ酸Alaに置換したCRMP2KIマウスを作成した(Yamashitaら20012)。正常眼圧緑内障のモデルとしては、NMDA眼内注入モデルとGLAST変異モデルを用いた。これらは、NMDAにおり網膜神経節細胞(RGC)が細胞死を起こす、またGLSTの機能低下により、グルタミン酸過剰は状態が起きて、進行性にRGC数が減少するものである。これら2つのモデルでCRMP2KIの効果を評価した。その結果、野生型に比べて、CRMP2KIにおいてNMDAによる細胞死が抑制されており、GLAST+/-マウスに比べ、GLAST+/-; CRMP2KIマウスでは残存するRGC数が多かった。以上のことから、CRMP2のリン酸化は、正常眼圧緑内障の治療標的になりうることが示唆された。現在、CRMP2のリン酸化抑制を来たす薬剤の効果を上記2つのモデルでの検証を開始している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、CRMP2のリン酸化の神経回路形成における機能的意義や、神経疾患の治療標的となり得るかを検証することを目的として行なっている。神経回路形成は特に皮質脊髄路(CST)の脊髄内での投射について検討している。野生型では同側のみに軸索が伸びるが、この左右の混線を防ぐ仕組みとしてEphA4-ephirinB3の系が知られている。即ち、EphA4またはephirinB3を欠損したマウスでは、こうした反対側への軸索伸長が見られる。またこのシグナル経路にa2-chimaerinが関与していることもその変異マウスの報告から明らかになっている。従って、EphA4シグナルの下流でCRMP2のリン酸化がどの様にCSTの軸索ガイダンスに関与するのかが、学問的問いであった。実験的には、野生型とCRMP2KIマウスの運動野に順行性のトレーサーを導入して、CSTを可視化し、脊髄内の投射を比較する。現在解析の個体数を増やして検討しているところである。
神経疾患としては、概要で述べた正常眼圧緑内障に加え、末梢神経障害によるアロデニアについて検証している。正常眼圧緑内障に対する効果について、CRMP2KIマウスでの検証を終えて、学術論文として発表した(Brahma et al., 2022)。末梢神経障害は、坐骨神経の半結紮モデルで行ない、行動解析と組織学的な解析を行なっている。現在解析の個体数を増やして検討しているところである。

今後の研究の推進方策

EphA4シグナルの下流でCRMP2のリン酸化がどの様にCSTの軸索ガイダンスに関与するのか明らかにする。即ち、CSTの形成に関するCRMP2のリン酸化の効果についてEphA4の関与をgenetic interactionにより調べるため、CRMP2KI/+; EphA4+/-を作成し、CRMP2KI/+とEphA4+/-と比較してCSTの異常が増悪するかの検討を行なう。
正常眼圧緑内障に対するCRMP2のリン酸化抑制の効果をCRMP2KIで検証することが出来た。この結果を踏まえて、CRMP2のリン酸亜抑制が報告されている薬剤での効果を検証中である。薬剤の効果判定も、NMDAとGLAST変異マウスの2つのモデルを用いて検討する。
末梢神経損傷についてのCRMP2のリン酸化抑制効果については、神経再生についての効果があるか検討するため、再生神経軸索のマーカーとしてSCG10を用いて、抗体染色により野生型とCRMP2KIマウスの損傷坐骨神経の染色結果を比較する。更に、坐骨神経と脊髄の炎症反応を野生型とCRMP2KIで比較し、損傷により惹起される炎症反応に差があるかを検討する予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により一部の実験が行えなかったため、次度に実施する計画としたため。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Genetic inhibition of collapsin response mediator protein‐2 phosphorylation ameliorates retinal ganglion cell death in normal‐tension glaucoma models2023

    • 著者名/発表者名
      Brahma Musukha Mala、Takahashi Kazuya、Namekata Kazuhiko、Harada Takayuki、Goshima Yoshio、Ohshima Toshio
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 27 ページ: 526~536

    • DOI

      10.1111/gtc.12971

    • 査読あり

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公開日: 2023-12-25  

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