我々は神経回路形成におけるCRMP2のリン酸化の意義を、皮質脊髄路(CST)の形成に着目して研究を進めた。手法としては、CRMP2のリン酸化部位のSer522をAlaに置換したCRMP2KIマウスを野生型と比較して解析した。脳内にトレーサーを注入して、CSTを標識することにより、神経回路形成の異常を調べることが出来る。その結果、脊髄レベルでCSTが同側のみに軸索を伸長することにCRMP2のリン酸化が関与していることを見出した(発表準備中)。また、CRMP2のリン酸化抑制が脊髄損傷や視神経損傷からの回復を促進すること報告してきたが、CRMP2のリン酸化を抑止したCRMP2KIマウスでは、坐骨神経結紮後に起きる異痛症が軽減されることを見出した(発表準備中)。さらに、CRMP2のリン酸化は正常眼圧緑内障(NTG)の進行にも関与しており、その抑制が病態改善に寄与するかを検討した。まずは、NTGマウスモデルとCRMP2KIを掛け合わせることでNTG病態の進行が抑制されることを報告した(Brahmaら2022)。更に、CRMP2のリン酸化を抑止することが報告されている薬剤をNTGマウスモデルに投与することで、NTG病態が改善することを報告した(Wangら2024)。今後は、これらの薬剤の抹消神経損傷後に起きる異痛症に対する治療効果を検討することで、ヒト臨床への応用を目指す研究を進める予定である。
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