研究課題/領域番号 |
22K06476
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
山形 朋子 東邦大学, 医学部, 助教 (90584433)
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研究分担者 |
船戸 弘正 東邦大学, 医学部, 教授 (90363118)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 睡眠 / 鎮静 / 麻酔 / デクスメデトミジン / アドレナリンα2受容体 / マウス / 大脳皮質 / 視床下部 |
研究実績の概要 |
今年度は、初年度に引き続き、鎮静薬投与時に活性化される細胞群が覚醒・睡眠・麻酔に果たす役割を検証した。手法としては、神経活動依存的に発現するfos遺伝子を利用したFos-Cre遺伝子発現システム(TRAP)、および、遺伝学的細胞破壊法、光遺伝学的操作(DREADD、オプトジェネティクス)を用いて、鎮静時活性化細胞の破壊・再活性化・抑制実験を行った。
鎮静薬デクスメデトミジン投与時に活性化される細胞群のうち、特に、視床の細胞群を光再活性化・光抑制する実験を行った。マウスの正向反射を用いて、麻酔による鎮静作用からの回復時間を調べたところ、光活性化条件では、光刺激の無いコントロール条件に比べて、鎮静状態からの回復にかかる時間が延長した。一方で、光抑制条件下では麻酔からの覚醒時間が短縮される傾向があった。さらに、麻酔中に生じる脳波のバーストサプレッションや徐波を指標として麻酔による鎮静の深さを調べたところ、光抑制下ではバーストサプレッション期間が短縮していたことから、光抑制によって覚醒度が修飾されていることが示された。その一方で、Casp3を用いた鎮静時活性化視床細胞群の遺伝学的破壊実験においては、鎮静作用への影響ははっきりとはみられなかった。
これらの結果により、視床において鎮静時に活性化される細胞群が、覚醒・鎮静を制御することが示唆された。一方で、鎮静時に活性化された視床細胞群が皮質・皮質下回路を中心とした神経ネットワークから除去された場合には鎮静ー覚醒制御に明らかな変化がなかったことから、視床の活動変化が覚醒・鎮静レベルに影響することが示唆された。 現在は、これらの細胞群の睡眠覚醒への影響を精査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経活動依存的に発現する遺伝子fosを利用したFos-Cre遺伝子発現システム(TRAP)を用いて、鎮静時に活性化されたニューロン群の選択的神経操作を実施し、視床鎮静細胞群の機能的役割が検証された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、鎮静時に活性化する細胞群の選択的神経操作を行う。さらに、今回見出された視床の鎮静細胞群の投射先を明らかにし、そのネットワークを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はほぼ予定通りに計画を遂行することができ、未使用額は少額であった。 次年度は繰越分とあわせて、消耗品費に充てる。
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