2023年度は、前年度に実施した馴化マウス4匹と相互作用する社会性行動課題を遂行中のマウス腹側海馬CA1野 (vCA1) より取得した神経生理学データを解析した。その結果、一部の神経細胞は、他個体の性別と系統の組み合わせに対して非線形の混合的な応答を示す、すなわち他個体の社会的アイデンティティを表現する一方で、別の神経細胞集団は性別または系統、すなわち社会的プロパティに特異的に応答することを見出した。このような神経細胞の集団的活動データから、被検マウスが相互作用している他個体のアイデンティティおよびプロパティが有意に読み出せること、またプロパティの情報は個体のアイデンティティをまたいで一般化されていることが示された。さらに、アイデンティティを表現する神経細胞はおもに海馬シータリズムの底付近で活性化するのに対し、プロパティを表現する神経細胞はそれより遅い位相で活性化するが、その細胞が好むプロパティを持つ他個体と相互作用するときには位相が前進することを明らかにした。以上の結果を論文としてまとめ、査読あり雑誌に投稿するとともに、プレプリントを公開した。
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