研究課題/領域番号 |
22K06486
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
松本 英之 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 助教 (50511383)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 意欲 / 学習 / 適応 / 報酬系 / 神経回路 / 電気生理学 / 光遺伝学 / 齧歯類 |
研究実績の概要 |
環境との相互作用を通して柔軟に行動することは生物の生存に重要であり、その生成メカニズムの理解は生体脳と人工知能の両方の研究の発展に貢献すると考えられる。中脳に分布するドーパミン細胞は前頭前皮質や大脳基底核など広範な脳領域へと軸索を投射し、環境に応じた柔軟な行動の選択や実行機能の制御に深く関与していると考えられる。しかし、各脳領域へと投射するドーパミン細胞が環境の変化に対してどのように活動を修飾させ、ドーパミン信号のその修飾が投射先の情報処理と機能の制御にどのような影響を及ぼすのか、その詳細はよく分かっていない。 申請者の近年の研究成果から、線条体の異なる部位に入力するドーパミン信号の性質に違いがあることが明らかになりつつある。このことから、学習や意欲に関する投射先別の情報処理機序の異質性が予想される。本研究では、報酬に基づいた目的指向行動を行う齧歯類から神経活動を計測しつつ、光遺伝学を用いた経路特異的な介入技術を用いて、学習と意欲を制御する神経回路のメカニズムを理解する。初年度はまず、申請者の研究で明らかになりつつある異なるドーパミン信号を受け取る別々の投射先にトレーサーやウィルスを注入し、神経回路を蛍光タンパク質等で逆行性に標識した。Cre組み換え酵素依存的にドーパミン神経特異的に感染する逆行性AAVを投射先に注入し、2週間後にラットを灌流固定、脳切片を作成し、異なる脳領域へ投射するTyrosine Hydroxyrase陽性ドーパミン神経細胞の細胞体の位置や軸索投射パターンを観察した。その結果、性質の異なるドーパミン神経回路の解剖学的特徴を見出すことができた。また、これらの成果は次年度以降に計画する経路特異的な情報処理機構の理解に向けた技術基盤を確立する上で重要な知見となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、行動課題の確立と行動データとドーパミン信号データの解析に加え、申請者のこれまでの研究成果に関連する解剖学的データを得ることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに取得したデータの解析および追加のデータ取得を行う。一回のセッションで記録される細胞数を増やして実験効率を上げるため、数百チャネルを搭載した記録電極を用いた大規模神経活動計測技術を立ち上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初計画していたよりも少ない動物や消耗品で研究を進めることができた。来年度は当初の予定より消耗品費や旅費等が増加すると予想されるため、翌年度分の助成金で不足する部分は次年度使用額で補うことを計画している。
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