研究課題/領域番号 |
22K06497
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 誠也 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任准教授 (70802677)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 可視光反応 / 配位子開発 / 遷移金属触媒反応 / DFT計算 |
研究実績の概要 |
遷移金属触媒反応は、一般的に 「熱」をエネルギー源とする二電子による反応である。そのため、一電子反応を可能とするパラジウムやプラチナなどの遷移金属のラジカル化学種の発生方法やそれらを用いた分子変換技術は未発達である。そこで、本研究では遷移金属触媒反応での効率的な一電子反応によって、従来法では困難な分子変換技術の開発に挑戦することとし、可視光を吸収し、金属にその電子やエネルギーを受け渡す配位子に着想した。そのようなコンセプトの元、アントラセンを含有する配位子を合成し、パラジウム触媒反応に用いることでラジカル反応が進行することをすでに報告している。そこで、新たな配位子としてアクリジンを含有する配位子の開発を行った。フェニル基、フリル基、イソプロピル基、シクロへキシル基をもつ2つのホスフィン部位を含有する、PNPピンサー型配位子と成るアクリジン誘導体をを4種合成し、それぞれニッケル、パラジウム、プラチナとの錯体を形成することで合計12種類の金属錯体を合成することに成功した。合成した金属錯体を可視光照射下、脱水素反応や水素移動型還元反応、アルケンのヒドロキシ/アルコキシアルキル化反応に付した結果、シクロへキシル基を含有する配位子とプラチナとの錯体において最も収率よく上記の反応が進行することが明らかとなった。DFT計算により反応機構も明らかとなり、プラチナの新たな側面に光を当てることができた。 本研究成果は国際的な学術誌であるACS Catalysisに報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
極短期間での新たな配位子の合成と金属錯体の調整、反応開発に成功したため。調整した金属錯体が非常に安定であったことが反応開発を加速しており、論文投稿も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、5種類の配位子の合成や金属錯体の形成、反応開発に成功し、2報の論文投稿に成功している。そこで今後は、さらに新たな配位子として、可視光を吸収するNHC触媒の開発を行うことを計画しており、DFT計算を駆使して効率的に研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は計画していた研究が順調に進行し、年度の早い時期に論文投稿を行う段階にいたった。また、論文投稿の後、当該研究をさらなる発展させるべく、DFT計算によって新たな配位子のデザインや反応のデザインを行った。そのため、当初計画していたよりも、当該年度では物品費が予想外にかからない状況となった。一方で、次年度では年度初めより、デザインした配位子を実際に合成するフェーズにあるため、物品費が多くかかることが予想されている。また、当該研究はデータが充実してきており、最終年度となる次年度には学会での発表も計画している。以上のことから、生じた次年度使用額は物品費や旅費、学会参加費に計上する予定である。
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