研究課題/領域番号 |
22K06499
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高山 亜紀 京都大学, 薬学研究科, 助教 (40778586)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アミド化 |
研究実績の概要 |
【具体的内容】N-Meアミノホスホニウム塩とカルボン酸とのカップリングによるN-Meアミド合成を計画、実施した。 【カルボン酸塩カウンターカチオンの検討】昨年、カルボン酸銀塩とN-Meアミノホスホニウムヨージドとの組み合わせによって良好な収率でN-Meアミド体が得られることを見出していた。 今年度は、カルボン酸塩のカウンターカチオンを種々検討した。その結果、第四級アンモニウム塩を用い、さらにモレキュラーシーブを添加すると良好な収率で反応が進行することを発見した。第四級アンモニウムとしては、ベンジルトリメチルアンモニウムを用いた場合、試薬の含水量が低くなることで副反応(アミノホスホニウム塩の加水分解)が抑えられた。この結果によって、以下の3つの事項が明らかとなった。 1. 本反応は銀イオン非存在下でも進行する、2. イオン交換が反応の駆動力となっている、3. 脱水条件が、副反応(加水分解)を抑制するのに重要である 【種々のカルボン酸塩の基質適用性】さらに、カルボン酸第四級アンモニウム塩の調製は容易であり、種々のカルボン酸塩の基質適用性を迅速に検討することができた。カルボン酸としては、イソプロピル酸、安息香酸などを検討したところ、3時間で反応は完結し86%以上の高収率で目的物が得られた。比較的嵩高いイソプロピル酸を基質とした場合も反応時間が遅延しなかった点は、カルボン酸の嵩高さが反応速度に大きく影響しないことを示唆する意義深い結果である。さらに、グリシン誘導体、バリン誘導体を検討したところ、反応時間の遅延はみられるものの79%と良好な収率で目的物を与えた。エピメリ化を起こさないアミドカップリングへ展開するには、反応速度の向上が必要であると分かった。この結果は、今後、アミノ酸誘導体へと展開する上で重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度確立した反応条件は、銀塩を用いた不均一系の反応であったため、NMR実験への展開や種々のカルボン酸塩を用いた検討へ展開することが困難であった。今年度、銀イオンの代わりに第四級アンモニウム塩を利用した反応条件を見出し、均一系の反応に改良することができた。銀イオンと異なり第四級アンモニウムは構造変換ができるため、カウンターカチオンの構造変換による反応性の調節が可能と考えている。 さらに、溶媒についても高極性溶媒のDMFを用いたDMF-THF混合溶媒系が適用できたため、今年度はアミノ酸誘導体を基質とした検討が可能となった。「カルボン酸第四級アンモニウム、DMF-THF混合溶媒、室温下」を最適条件として、種々のカルボン酸側の基質適用性を検討した。その結果、現在までは、嵩高いカルボン酸やグリシン誘導体,バリン誘導体にも適用可能であることが判明した。種々の基質を検討することで、反応の進行に影響する因子(含水率、水素結合数、イオンの親和性)を明らかにすることができている。 分子内反応か分子間反応かを調査すべく、クロスオーバー実験を行ったところ、分子間でも反応が進行していることが示唆された。当初、予想していた反応機構とは異なる可能性が浮上したため、更なる調査を行う。
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今後の研究の推進方策 |
【反応機構に関する実験】LCMS解析では、推定反応機構の活性アシル中間体を観測することができていない。そのため、この中間体を観測すべく、NMR実験を利用した反応機構の解明を予定している。現在最適化した反応条件は均一系であるため、NMR実験が可能であり、現在利用可能な溶媒の再スクリーニングを実施中である。 【反応条件改良】本反応の反応速度には基質の水素結合ドナーの数が影響していることが分かったため、反応時間の短縮を目指して、現在第四級アンモニウム塩の構造を改良している。 【基質適用範囲拡大】論文投稿へ向けて、カルボン酸、アミノホスホニウム塩側の基質適用範囲を拡大し、調査を行う。Boc保護アミノ酸が本反応に適用可能であったため、種々のBoc保護アミノ酸を用いてペプチド系基質に本反応を適用し、エピメリ化率、収率を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が2023年4月から6月まで海外に長期出張で、この期間研究費を使用できなかったため
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