研究課題/領域番号 |
22K06503
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
阿部 匠 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (80453273)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 極性転換 / インドール / アジド基 / メトキシ基 / 芳香族求核置換反応 / C3-N1ビスインンドール / アルミニウム錯体 |
研究実績の概要 |
「求核剤を求電子剤にする研究」は少なく、特に電子豊富な複素環の極性転換はあまり知られていない。複素環の特定の位置での極性転換を行うことはさらに難しく、全くの手付かずの研究分野である。本研究は位置選択的極性転換のテーラーメイド合成への適用を可能にすべく、アルコキシ基をインドールの極性転換スイッチとする新分子の創出と新たな反応様式の開拓を目的とする。それにより、位置選択的イプソ置換反応を基盤とした複素環分子のテーラメイド合成の手法を提示し、有機合成手法の革新と多様な化合物合成の効率化を目指す。前年度までに得られた知見を以下に示す。
1)極性転換スイッチの探索の過程において、メトキシ基に加えてアジド基が利用可能であることが判明した。アジド基を有する極性転換型インドール試薬の反応性の検討を行い、スタウディンガー/アザWittig/環化反応からなる新規環化反応を見出した。本反応により、イサト酸無水物と極性転換型インドール試薬からshewanelline Cの基本骨格の構築に成功した。本年度は全合成研究を新たに開始した。。
2) メトキシ基のスイッチに関して、インドール 一位に組み込むことに成功した。このN-メトキシインドールを基質として、アルミニウム錯体存在下、求核剤としてインドールとの反応に賦したところ、芳香族求核置換反応が進行しC3-N1ビスインドールを得ることができた。基質適用範囲はそれほど広くないことが判明したが、C3-N1ビスインドールの直接的な合成法はこれまで報告されておらず、アドバンテージを有する手法であると考えている。本年は、C3-N1ビスインドール型アルカロイドの合成に本手法を適用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極性転換スイッチの探索の過程において、メトキシ基に加えてアジド基が利用可能であることを発見できた。当初予期していない本知見により、金属錯体との組み合わせ数も増大し、反応開発が頓挫した時の選択肢を増やすことに成功した。予備的検討において、天然物骨格をワンポットで構築できることがわかった。 メトキシ基のスイッチに関しても、基質合成に時間を要したが、その後の検討は予想以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
アルコキシ基をインドールの極性転換スイッチとする新分子の創出と新たな反応様式の開拓を継続して行う。それにより、位置選択的イプソ置換反応を基盤とした複素環分子のテーラメイド合成の手法を提示し、有機合成手法の革新と多様な化合物合成の効率化を目指す。それら目標の一つとして、医薬品候補化合物の合成もしくは、天然物ならびに天然物の骨格合成を掲げており、それら目標の達成に向けて合成研究にも着手して行きたい。 また、当初予期していないアジド基の極性転換スイッチとしての利用可能性をさらに検討する。金属錯体と反応剤の組み合わせに関しては、これまでの検討過程に捉われず鋭意検討し、新しいアジドケミストリーを展開して行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究が順調に進行したため、当初予定していた試薬や溶媒などを購入する必要がなくなったため次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度は、研究の遂行上、水素ガスや金属錯体、これまでに購入していない試薬のいくつかを使用する予定である。特に合成研究において、多くの種類の試薬を使用する予定であるので、これらの購入に充てる予定である。
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