研究課題/領域番号 |
22K06505
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
川口 充康 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (10735682)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中分子阻害剤 / SIRT2 / 光異性化 |
研究実績の概要 |
近年、Sirtuin (SIRT) は「脱アセチル化活性」に加え「脱ミリストイル化活性」を示すことが明らかになり、各々の活性が異なる生理的・病理的機能を制御することも示されている。酵素サブタイプ間での選択性に加え、単一酵素内の各々の活性に対して選択性を持つ阻害剤が開発できれば、酵素機能を詳細に解明するツールになるだけでなく、副作用の少ない医薬品にも繋がる。しかし、SIRTを標的としたそのような阻害剤の開発例はない。本研究で私は、これまでの研究で見出した「脱ミリストイル化活性」に対し選択性を示すペプチド性阻害剤S2DMi-7を基に、SIRT間でのサブタイプ選択的かつ病理機能を示す酵素活性選択的に阻害する中分子化合物を開発・評価し、その創出戦略の有用性実証を目指し研究に着手した。本年においては、細胞膜透過性が乏しいことが分かっていたペプチド性SIRT2阻害剤S2DMi-7の細胞膜透過性向上を目指し、i)オクタアルギニン部位、ii)リポ酸基、iii)環状化の3つのアプローチの中で最も透過性が高まる手法の評価を行った。阻害活性評価の結果、誘導体化によりやや阻害活性の低下が認められたものの、いずれの阻害剤でも強いSIRT2阻害活性を示すことが明らかになった。また、特にオクタアルギニンや環状化阻害剤においてSIRT2を発現するHeLa細胞に対し細胞障害性を有すること、およびAc-Tubulin量を増加させることが示され、S2DMi-7に比べて格段に細胞膜透過性が高まっていることが示唆された。さらに、SIRT2により脱アセチル化されることで安定化されることが知られるBubR1のタンパク質量を評価したところ、阻害剤処理によりBubR1の分解が促進されることが明らかになった。以上より、特に環状化ペプチド性SIRT2阻害剤において細胞膜透過性が高まることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞膜透過性が認められなかったS2DMi-7の構造展開を行うことにより、細胞膜透過性を持ち、かつ細胞内でもSIRT2を阻害するペプチド性中分子阻害剤を創製することに成功したため概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、アゾベンゼンの光異性化によりSIRT2阻害活性のOff/Onが達成できるか評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年は、効率の良い合成およびアッセイを行うことができたため請求した額よりも少額で研究を実施できた一方で、期待した以上の成果が得られた。次年度はさらに精力的に研究を進めることにより、主に消耗品費として持ち越した研究費を使用することを計画している。
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