研究課題/領域番号 |
22K06507
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
鈴木 由美子 上智大学, 理工学部, 教授 (20295546)
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研究分担者 |
川口 眞理 上智大学, 理工学部, 准教授 (00612095)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | キナゾリン / 蛍光 / RNAヌクレオシド |
研究実績の概要 |
DNAおよびRNAの蛍光イメージングはこれら分子の役割・機能の解明に有益である。特に、生きた細胞を用いるイメージングは細胞内核酸のリアルタイム観測を可能にする。しかし、既存の蛍光標識剤は、蛍光団の嵩高さに起因する効率の低さや蛍光波長の柔軟性の低さが課題とされている。この問題に対する解決策として、構造が小さく、任意の置換基の導入によって蛍光波長を変化させることのできる、蛍光物質 2-アミノキナゾリンの利用を検討した。 キナゾリン蛍光団のアミノ基の機能を解明する一環として、無置換アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基の液性に対する応答性を比較した結果、無置換およびモノメチルアミノ体は同じ挙動(酸性で蛍光発光する)を示し、塩基性で発光するジメチルアミノ体とはpH応答性が異なることが判明した。 キナゾリン蛍光団のボロン酸誘導体と、5-ヨードデオキシウリジンとの鈴木-宮浦カップリング反応にて、蛍光修飾ヌクレオシドを合成した。本ヌクレオシドは、酸性条件と塩基性条件ともに蛍光性を示し、異なる波長にて発光した。シチジンおよびデオキシシチジンについても同様に、キナゾリン蛍光団が導入された誘導体を合成した。ヌクレオシドのトリリン酸化も試みたが、生成物の精製が困難であり、単離、構造確認に至っていない。 キナゾリン蛍光団を培養細胞に添加すると、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれることを蛍光顕微鏡にて観察した。今後、細胞内小器官のpH観察への利用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
半年間サバティカル制度を利用して海外に研究滞在したため、本課題の進捗がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
合成した蛍光標識ヌクレオシドのトリリン酸化を行い、細胞内 RNA イメージングを実現する方法として広く用いられている、Fluorescence in situ hybridization 法への利用を検討する。 これまでに合成した複数のヌクレオシドをDNA合成用のモノマー(ホスホロアミダイト)へと変換し、DNA合成を行う。 蛍光標識ヌクレオシドを用いて、細胞内pHの観察実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究費での購入を予定していた分光蛍光光度計を他の外部資金にて購入できたため、初年度の使用額に差額が生じた。昨年度初頭に、この差額を昨年度と本年度で、付属装置や器具、高額消耗品の購入に使用する計画を立てたので、現在計画的に研究費を使用できている。本研究課題で使用する実験装置の修理費にも使用予定である。
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