研究課題/領域番号 |
22K06508
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
福原 潔 昭和大学, 薬学部, 教授 (70189968)
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研究分担者 |
水野 美麗 昭和大学, 薬学部, 講師 (60766195)
大野 彰子 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性予測評価部, 主任研究官 (70356236)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アミロイドβ / 凝集阻害活性 / 神経細胞毒性 / ペプチド / セクレターゼ |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病ではアミロイドβ(Aβ)が凝集して生成するオリゴマーが神経細胞死や脳の萎縮を引き起こす。α-セクレターゼはアミロイド前駆体蛋白質のAβドメイン内を切断する。本研究ではAβに対してα-セクレターゼ様活性を有することで、Aβを特異的に切断してAβの凝集を引き金とする神経毒性を根本的に抑える化合物を開発する。本化合物はAβ認識ユニットと切断ユニットから構成される。昨年度はAβ凝集阻害活性が報告されているAβの16 - 20番目の部分配列Lys-Leu-Val-Phe-Phe(KLVFF)のPheをカテコール構造を有するドーパ(Dp)に置換したペプチド(KLVDpF, KLVDpDp)を合成した。本ペプチドはAβに対して高い親和性を示して、Aβの凝集による神経細胞毒性を強力に抑制することから優れたAβ認識ユニットとして有用であることが明らかとなった。今年度は、プロテアーゼ活性が報告されているFe-EDTAおよびFe-DTPAについて、Aβのペプチド結合に対する切断活性を有することを目的として、Aβの16 - 20番目の部分配列KLVFFにFe-EDTAおよびFe-DTPAを適度なspacerを介して結合させた化合物の合成を検討した。Fmoc法による固相法によってKLVFFを合成後、spacerとしてglycineを4〜8個結合させた。脱Fmoc後、EDTAおよびDTPAとの反応は、HOBtやHATU等の縮合剤では進行しなかったが、DMT-MMを用いると容易に進行した。その後、脱樹脂を行い、HPLCで精製して目的とするペプチドを合成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではAβに対してα-セクレターゼ様活性を有することで、Aβを特異的に切断してAβの凝集を引き金とする神経毒性を根本的に抑える化合物を開発する。本化合物はAβ認識ユニットと切断ユニットから構成される。Aβは分子間でβシート構造を形成することに着目し、Aβの16 - 20番目の部分配列Lys-Leu-Val-Phe-Phe(KLVFF)をAβの認識ユニットとして利用する。昨年度はAβ認識ユニットのAβへの親和性の増強を目的としてKLVFFのFをカテコール構造を有するドーパ(Dp)に置換したペプチド(KLVDpF, KLVDpDp)を合成した。Fe-EDTAおよびFe-DTPA はH2O2存在下、活性酸素を発生してペプチド結合を切断することが報告されている。そこで、今年度はこれらがAβ切断ユニットとして有用であることを明らかにすることを目的として、KLVFFに適度なspacerを介してFe-EDTAおよびFe-DTPAを結合させた化合物を合成した。固相法によってペプチド部分を合成後、EDTAおよびDTPAとの結合を検討したところ、通常の縮合剤では反応は進行しなかったが、DMT-MMを縮合剤として用いると、容易に反応が進行し、その後、脱樹脂とHPLCによる精製を行うことで目的とする化合物を合成することができた。以上、Aβ認識ユニットとしての候補ペプチドの合成、およびAβ認識ユニットと切断ユニットとの縮合反応が終了できたことから、αセクレターゼ様活性を有するペプチドの開発は予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はAβに対して高い結合親和性を有するペプチド(KLVDpF, KLVDpDp )にプロテアーゼ阻害活性を有するFe-EDTAやFe-DTPAを結合させた化合物を適度なスペーサを介して結合させた化合物を合成する。今年度合成した化合物とともにAβに対する切断活性を明らかにする。また、神経細胞SHSY-5Yを用いてAβによる神経毒性に対する抑制効果を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は、ほぼ予定通りに進行しているが、ペプチド合成後のHPLCによる精製、および予定していたアミロイドβの凝集阻害実験、神経細胞毒製への影響等の実験を行っていないので、これらにかかる費用が次年度に繰り越すことになった。これらの実験は繰り越された助成金によって次年度に実施する予定である。
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