研究実績の概要 |
(1) 2,2-二置換-1,3-シクロヘキサンジオン誘導体のジアステレオ選択的ケタール化反応による特異な生物活性を有するアルカロイド類の不斉合成研究 ジアステレオ選択的分子内ケタール化反応による不斉第四級炭素構築法を抗ウィルス作用や抗マラリア作用のような生物活性をもつ (+)-mesembrane および (-)-amabiline のような多環性アルカロイド類の不斉合成に適用とした. まず,(+)-mesembrane の不斉合成の検討を行った.4-iodo-1,2-dimethoxybenzene と 1,3-cyclohexanedione を CuI 存在下にカップリングし,さらに C2 位に Pd(PPh3)4 を触媒として 4-methoxycarbonyl cinnamyl 単位を導入した.さらに,AD-mix-a を用いる反応,引き続く分子内ケタール化反応では,89%e.e. の光学純度,99% 以上のジアステレオ選択性で生成物を得ることに成功した.続いて,カルボニル基をトシルヒドラゾンに変換し,NaH を用いる Shapiro オレフィン化反応によりアルケンに変換した.現在までのところ,(1) ケタールの部分加水分解,(2) ヘミケタールと平衡関係にあるジオールの酸化的開裂,(3) 二重還元的アミノ化反応により,(+)-mesembrane の基本骨格の合成に成功した.今後,N-メチル化とアルケンの還元により不斉全合成を達成する予定である. (2) 2,2-二置換シクロペンタンジオン誘導体のジアステレオ選択的ケタール化反応 2位にアルキル基と不斉炭素を有する側鎖をもつ1,3-シクロペンタンジオン誘導体についても検討を開始し,高いジアステレオ選択性で分子内ケタール化反応が進行することを確かめた.一般性の有無や合成科学的な応用について検討を行う予定である.
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