研究課題/領域番号 |
22K06517
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
北村 正典 松山大学, 薬学部, 教授 (80453835)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 化学発光 / ジオキセタン / 立体障害 |
研究実績の概要 |
生体現象を生きた生体中で捉えるための方法として,これまでに蛍光性プローブ分子が精力的に研究,開発されてきた.目的とする生体現象が起こった際に生じる生体分子を捉え,蛍光発光が変化(発光波長や発光量子収率が変化)することで,生体現象を可視化する.ただし,生体内ではヘモグロビンや水などによる光の吸収や散乱があり,生体内深部を捉えようとすれば,生体を透過しやすい650~1350 nmの光(光の生物学的窓)を用いる必要がある.つまり,蛍光性物質を用いる場合には,「励起光」および「発光」のいずれもが,この波長領域になければならない.一方,蛍光の代わりに化学発光を用いれば,「発光」波長のみが生物学的窓内にあればよいだけである.化学発光プローブ分子を使うとその他多くの利点が期待されるが,その発光効率が悪いことがこれまでの最大の問題点であった. そこで,化学発光プローブ分子にこれまでの研究とは異なる立体障害を導入して一重項励起状態を効率的に作ること(方法1),および ,三重項励起状態が生成しやすいのであれば,それを積極的に利用して発光させること(方法2),に取り組んでいる.方法1によって,既存の研究とは異なる立体障害を導入した化合物の合成を行っているものの,その立体障害の大きさ故に,ジオキセタンのそのものの合成が非常に困難であることが,これまでの研究によって分かった.また現在まで,高効率に化学発光する有力な分子は発見されていないものの,ジオキセタン化合物類の安定性に関する知見と,それに伴う合成の難易度についての情報が得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍での研究代表者の異動があり,新たに研究室の立ち上げに時間を要している.また,コロナ禍の影響が残っており,研究実施可能時間が減少しているため,進捗状況がやや遅れている. しかし,本課題の元来の研究目的ではないが,次のような研究成果には至った.化学発光プローブ分子を生体内で用いるためには,水溶性である必要があり,またさらに細胞膜透過性を有している方が望ましい.これらを満たす分子群としてカチオン性のアンモニウム塩が挙げられる.このカチオン性アンモニウム塩を用いた有機合成反応についての本の執筆を行い,その可能性について検討を行っている. 以上の理由から「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
現在は研究室配属学生数も増えたため,大人数で課題へ取り組む予定である.また,コンピューターを使った計算科学を用いることで,プローブ分子設計の単純化を試み,その合成の効率化を図る予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
基金化された本研究費は,年度に捉われない研究費の支出など柔軟な執行が可能となっている.コロナ禍の影響の残る状況においては研究の不確実性があったため,該当年度の支出を最小限となるようにし,研究成果の向上および研究領域の拡大とともに使用支出(備品の購入など)を増やす計画としている.
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