研究課題/領域番号 |
22K06533
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
名取 良浩 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (50584455)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | イミノ糖 / チオ糖 / ヌクレオシド誘導体 / ジフェニルジセレニド / 分子内環化 |
研究実績の概要 |
研究計画に従い、チオ糖とイミノ糖の合成に従事した。 1) 環内部に硫黄をもつチオ糖の合成について (R)-グリシドールから9工程で鍵工程の基質となる環化前駆体を調製した。環化前駆体に対して酢酸イオンを用いて反応を行った。本反応は酢酸イオンによる三員環スルホニウムイオンの開環を経由して進行すると推定している。条件検討の結果、フッ化セシウムと酢酸の組み合わせを酢酸イオン源とし、DMF中60℃で反応を行った際に、高収率で環化体が得られた。本反応によりチオ糖のチオフラノース環と4位の置換基を構築できた。環化体の水酸基をTBS基へ変換し、さらに酸化によりスルホキシドとした。プメラー転位により1位にアセトキシ基を導入することでチオ糖を合成できた。 得られたチオ糖からコルジセピン(冬虫夏草由来の天然物)のチオ糖アナログの合成を検討をした。Vorbruggen法により、1位のアセトキシ基を6-クロロプリンで置換した。1'位にプリン塩基をもつチオフラノース誘導体 (1'位のジアステレオマー比 約1:1)を合成できた。クロロ基からアミノ基への置換を経てコルジセピンのチオ糖アナログの合成を達成した。今後、核酸塩基導入における1'位の立体選択性の向上を検討し、チオ糖部をもつヌクレオシド誘導体の生物活性を評価する予定である。 2) 環内部に窒素をもつイミノ糖の合成について D-アラニンを出発物質として、分子内の適切な位置に窒素原子とオレフィンをもつ環化前駆体を合成した。環化前駆体に対して、触媒量のTMSトリフラートの存在下、ヨードベンゼンジアセタートとジフェニルジセレニドを用いて反応を行った。その結果、オレフィン部がエピセレニウムイオンへと活性化され、窒素原子からの求核攻撃がおこり、分子内での環化反応が進行した。現在得られた環化生成物から目的とするイミノピラノースの合成を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に従って研究を実施している。2022-2023年度では、チオ糖・イミノ糖の合成を中心に研究を行う計画である。 1) 環内部に硫黄をもつチオ糖の研究について 研究実績の概要で述べたように、環の内部が硫黄をもつチオ糖の研究では、冬虫夏草由来の天然物であるコルジセピンのチオ糖誘導体を合成できた。合成計画の際、鍵工程に設定した酢酸イオンによる三員環スルホニウムイオンの開環を伴う環化反応では、高い収率で目的生成物を獲得することができた。本反応では、環化前駆体からからチオフラノース環と4 位の置換基を一挙に構築することが可能であった。そのため、チオ糖の研究については、「順調に進展している。」と考えている。 2) 環内部に窒素をもつイミノ糖の研究について 合成については、鍵反応によって窒素を含む6員環の構築が可能であった。しかし、イミノ糖のもつ水酸基の立体選択的な構築には至らなかった。そのため、イミノ糖の研究における進捗状況は、「やや遅れている。」と考えている。 以上、チオ糖・イミノ糖の研究を総括すると「おおむね順調に進展している。」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 環内部に硫黄をもつチオ糖の研究について チオ糖部の構築後の1'位への核酸塩基導入では、立体選択性が発現せずに課題を残す結果となった。2023年度では、1'位の立体選択性の向上を検討する予定である。加えて、プリン塩基だけでなくピリミジン塩基を導入したチオ糖部をもつヌクレオシド誘導体の合成も計画している。さらに2024年度から合成した化合物を用いて、生物活性を評価する予定である。 2) 環内部に窒素をもつイミノ糖の研究について イミノ糖の研究における進捗状況は、「やや遅れている。」と考えている。そのため今後は、標的物質をイミノ糖だけでなく、ピロリジン環を含む天然アルカロイドにも拡大し、それらの合成について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
■次年度使用額が生じた理由 チオ糖の合成が計画よりも順調に進んだため、次年度使用額が生じた。 ■使用計画 合成した化合物に対して、構造活性相関研究を実施する予定である。その結果、新たに合成する化合物が生じる。そのため試薬購入に使用する計画である。
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