研究実績の概要 |
イナミドから生じるメタルビニリデン中間体を利用した含窒素複素環の構築に取り組んだ。特に、インドール部位を分子内に有するイナミドを基質として用いた反応を検討した結果、様々な生物活性天然物の中心骨格として含まれるアゼピノ[4,5-b]インドール骨格およびジアゼピノ[1,2-a]インドール骨格を中程度の収率で構築できた。なお、本骨格の構築にあたり、以前報告した「フェニルイナミドからメタルビニリデン中間体を経たインドール合成法」における触媒としてTp配位子をもつルテニウム触媒が今回の反応でも最適触媒であったものの、同反応で最適溶媒であったTHF溶媒は今回の反応では目的物の収率が低かった。そこで、溶媒の再検討が必要となり、検討の結果、アセトンのような高極性溶媒が良好な収率で目的の環化体を与えることがわかった。続いて、置換基効果を種々検討した結果、インドール部位における置換基が反応の収率に大きな影響を与えることが明らかとなった。すなわち、インドール部位の求核性が高いほど環化体の収率が高く、求核部位の電子密度が本反応の収率に寄与することがわかった。特に、インドール1位の窒素原子上に電子供与基を置換させると劇的に収率が向上した。インドール以外の複素環としてベンゾフラン部位をもつ基質では環化が進行しなかったことからも、求核部位の電子密度が大きな影響を与えていることが示唆された。 本年度の研究成果は、第51回 複素環化学討論会にて発表した(演題名:イナミドから生じるルテニウムビニリデン中間体を経たアゼピノインドール骨格構築法)。
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