研究実績の概要 |
これまでに、サラシアから単離されたチオ糖スルホニウム硫酸分子内塩 Salacinol およびその脱硫酸エステル体 Neosalacinol が、アカルボース、ボグリボースやミグリトールなどの医薬品に匹敵する強いα-グルコシダーゼ阻害能を示すことを明らかにしている。この研究成果は、Salacinol 型 ポリヒドロキシスルホニウム塩がα-グルコシダーゼときわめて高い親和性を示すことができることを、世界に先駆けて明らかにしたものであった。そこで、Salacinolや Neosalacinol のD-グルコースに相当するチオ糖部水酸基の立体化学を変更してα-グルコシダーゼ関連酵素群のガラクトシダーゼ阻害能もつスルホニウム塩の検討を行った。本年度は、昨年度にD-リボースから合成した D-ガラクトースに相当する骨格の5員環チオ糖を用いて数種のスルホニウム塩 (1) の合成に着手した。手始めに単純なアルキル基として 1a:C2H5, 1b: n-C3H7,1c: n-C4H9, 1d: n-C7H15, 1e: n-C10H21 をもつ化合物を合成し、その阻害活性能を評価した。その結果、1a-1c はほとんど阻害能を示さなかった。しかし、側鎖が長くなるにつれ阻害活性 (1d: 62% at 1mM, 1e: 33% at 1mM) が認められた。この結果は、本化合物群は酵素に取り込まれた場合、スルホニウム原子上の長い置換基との相互作用が関係していることが示唆しているが、本化合物群がもつ5員環チオ糖部との親和性が良好でない可能性があり、すべての化合物に強い活性が認められなかったと考えている。このように、本研究を通じて、ガラクトシダーゼ阻害剤の創製になる手掛かりが得られた。今後、5員環チオ糖を6員環チオ糖に変換したスルホニウム塩を設計し、さらに活性が増強した化合物を合成する予定である。
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