光音響イメージングは、光を吸収した分子が熱膨張する際に生じる音波を検出して画像化する手法で、光と音波の両方の長所を併せ持つ。そのため、光のシグナル強度変化などから得られる機能的情報と音波の高い透過性の両方を利用でき、組織透過性が低いという光の欠点と形態学的情報しか得られない音響波の欠点を克服することができる。現在、ヘモグロビン・オキシヘモグロビンを内因性造影剤とした、血管や低酸素状態の光音響イメージングが行われている。今後、広い適用範囲をもつ有用なイメージング技術として普及していくためには、様々な生体分子や環境、病態を高いコントラストで描出できるイメージング剤を開発する必要がある。しかし、現在までのところ、生体分子などに応答して光音響シグナルを変化させるアクチベータブルな光音響イメージング剤の分子設計法は確立していない。 これまでインドシアニングリーンを用いたイメージング剤の研究を行う中で、構造中の官能基の電子供与性/吸引性の変化により交差共役の共鳴構造の寄与が変化し吸収ピークがシフトする化合物を見出した。そこで、官能基の電子供与性/吸引性の変化に起因する吸光特性変化を、様々な標的分子に対する光音響メージング剤の分子設計に適用できるのではないかと考えた。本研究では、官能基の電子供与性/吸引性の変化に基づく吸光特性変化を利用した分子設計法を確立し、光音響イメージングへと応用することを目的とする。本年度は、酸性環境に応答するアクチベータブルな光音響イメージング剤を開発し、がん細胞のイメージングに応用するための検討を行った。
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